「では中途採用にしよう」という方針はOKなのか?

だからといって、中途採用がうまくいくのかといえば、そうとは限りません。

「当社には人を育てている時間なんてないから即戦力を採用したい」という経営者もいらっしゃいます。

確かに、転職してきた社員が、入社初日からバリバリ働き、高い成果を上げる、そんな人材であったらどんなにすばらしいでしょう。

しかし、世の中それほど甘くはありません。人が足りなくて猫の手も借りたいような状況で採用すると、たいていは失敗してしまいます。

人事業界では「お腹がすいているときに採用してはいけない」という格言があります。空腹時は何を食べてもおいしく感じます。場合によってはあわてて食べてお腹を下すこともあります。採用担当者の皆さんは、自社が「お腹がすいていないか」よく自覚しましょう。

とはいえ、確かにお腹がすいているから食べるのであって、食べるものを選んではいられないということもあるでしょう。昨今は「人手不足倒産」も増えています。

管理職としては使えずモンスター社員になってしまった例

先ほど「新卒採用はよく考えろ」と言ったじゃないか、中途も気をつけろ、では、どうしたらいいんだ⁉ とも思われるでしょう。

中途採用の成功率は私のこれまでの実感値では約4割です。採用方針をしっかり定めて慎重な選考を行なわないと、6割以上は失敗に終わってしまいます。

特に注意しなければならないのは、社員がモンスター化してしまうことです。私たちのところにも、「モンスター社員をどうしたらいいでしょう」というご相談はしばしば来ます。

モンスター社員とは、モンスターペアレントなどと同じで、企業や職場をおびやかす、自己中心的かつ理不尽な困った社員を指す言葉です。

ある会社では、マネージャーの経験があるという人物を即戦力として採用したところ、実際にはマネジメントがまったくできないことが露見してしまいました。

だからといって解雇はできませんし、すぐに退職勧奨するというわけにもいきません。しかたなく本人に「今後はプレーヤーとしてがんばってほしい」と伝えたところ、「それは話が違います! 私はマネージャー以外の業務はやりません!」と逆ギレされたそうです。

手のひらをこちらに向けて断るビジネスマン
写真=iStock.com/masamasa3
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実は雇用する際に不備があり「マネージャーとして採用する」という雇用契約書を交わしてしまっており、本人の同意なく配置転換も難しい。一方でマネージャーとして成果はあげない、他の仕事は一切しないという人を評価するわけにもいかず、低評価をすると「不当だ! 訴える」と騒ぎ出し大問題となりました。