そもそも新卒を一括採用する理由とは?

なぜ新卒を採用するのですか?

私は、この問いを経営者や「人事の学校」などで多くの人に投げかけてきました。一瞬、皆さんとまどわれます。「え? なんでだっけ?」。

多くの答えは「他社を経験しておらず真っ白だから」というものです。「新卒のほうが、中途より定着するから」という答えもあります。

本当にそうでしょうか。

私は「新卒採用は真っ白だから染めやすい」「中途よりも定着しやすい」という考えは、ある種、都市伝説に近い、根拠のない考え方ではないかと思っています。

「新卒は真っ白」という気持ちはわからなくもありませんが、SNS全盛の今日、接する情報量は豊富で、かえって経験がないぶん誤った就業観や会社観を持っているかもしれません。

また、新卒が定着しやすい、というのは、多くの企業で新卒に対しては導入研修やOJTなど時間をかけて丁寧に教育を行っているからではないでしょうか。それに対して、中途採用は半日程度の会社説明で現場に配属ということも多いようで、これが定着に結びついていない一因とも考えられます。

新入社員
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新卒社員が3年で3割辞めるといわれる時代

中途採用でも、きちんと時間をかけて教育し、組織に溶け込めるような施策をすれば、定着率は新卒と変わりません。場合によっては他社を経験している分、自社のよさを感じてもらえるかもしれません。

新卒が3年で3割辞めるといわれる時代です。場合によっては数年で全員が辞めてしまった、ということもあります。それでは募集から採用までの活動がまったく無駄になります。

少子高齢化で、若手の採用はこれまでになく難しくなっています。大手志向も変わっていません。そして、テレビを見れば、転職に関するCMを見ない日はありません。それこそ「明るく元気で素直」な若手は、中途採用市場でもひっぱりだこです。

新卒採用には莫大ばくだいな時間とお金と手間がかかります。入社後の教育も同様です。そのリソースを、中途採用者や既存社員への投資に活用すれば、定着率も高まり、優秀な人材も育つかもしれません。

それでも新卒採用をするのであれば、なぜなのか、を明確にしましょう。いま一度、「なぜ新卒採用をするのか」を問い直す必要があるでしょう。