気を付けたい老親の難聴の兆候

加齢による難聴は少しずつ進むので、本人が自覚症状を持って訴えてくることはなかなかありません。また、「加齢だから仕方がない」と、あきらめてしまっていることも多いでしょう。ですから、帰省したときなどに、兆候が出ていないか、まわりの家族が気を付けてあげてほしいと思います。特に以下の6点に気を付けてみてください。

①聞き返す回数が増える

会話をしているときに「え?」「何て言ったの?」など、聞き返す回数が増えていないか、気を付けてみてください。

②会話がかみ合わない

会話の途中で聞き返すのは、本人も面倒ですし、話の腰を折るように感じて遠慮することもあります。聞き取れないまま会話に参加していると、話がかみ合わなくなることがあります。

③呼びかけても反応しない

子どもの高い声は聞き取りにくくなりやすいため、たとえば孫が後ろから呼び掛けても反応しない、といったことが起こります。

④会話中に前かがみになる

耳が遠くなると相手の話をよく聞こうとして、前かがみになって耳を近付けてくることが増えることがあります。

⑤電子レンジの音に気づかない

テレビやラジオの音量が大きくなるのは、難聴のわかりやすい兆候としてよく挙げられますが、加えて電子レンジや携帯電話、給湯器などが鳴っているのに反応しなくなったりすることも多いようです。電子レンジや給湯器くらいならよいのですが、警報などのアラーム音にも気付きにくくなることがあるので注意が必要です。

⑥外出が減っている

難聴だけが原因ではないこともありますが、外出が減るのも、聞こえが原因の場合があります。外で人に会っても会話が続かず面白くないなどの理由で、これまで積極的に参加していた地域の行事に行かなくなったり、よく一緒に出掛けていた友人と遊びに行ったりしなくなったりすることがあります。

シニア女性の組んだ手元
写真=iStock.com/Hanafujikan
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「補聴器」で聞く力を補う

こうした兆候があった場合は、まずは耳鼻科で検査をしてください。聞こえにくくなっている原因が加齢による難聴かどうか、確認してもらいます。単に耳垢がたまりすぎている場合もありますし、聴神経に腫瘍ができているといった可能性もあります。

加齢による難聴は、治療することは難しいですが、認知症を防ぐためにも「補聴器」で聞く力を補うとよいでしょう。多くの耳鼻科には「補聴器相談医」と呼ばれる補聴器のプロがおり、補聴器が必要かどうか、どのような補聴器が良いか、などが相談できます。視力が落ちたときの眼鏡と同じで、本人に合った補聴器を使うことで、生活の質を維持することができます。補聴器は比較的高額ですが、医療費控除の対象になったり、補助金の対象になる場合もあるので、それも補聴器相談医に相談するとよいでしょう。