両親との18年ぶりの同居
2022年8月。40歳になった関東地方在住の雨宮木綿子さん(仮名)は、勤め先の病院(医療事務)が閉院してしまい、失職。そのため頻繁に実家に顔を出すことができるようになったが、行くたびに疲れた顔をしている父親(73歳)のことが気になっていた。父親は58歳で定年退職後、すぐにサービス系のアルバイトを1日5時間、週3回している。
「娘の私から見ると、父は疲れ知らずで、困ったときは助けてくれる頼れる父親でした。そんな父が、初めて私たちに『疲れちゃったよ』と言うようになりました。母が怒りっぽくなってからは、父は母の愚痴をこぼすようになり、『もう、どうすればいいのかわからないよ』と弱音を吐くこともありました」
2018年11月からデイサービスに行くようになった母親(76歳)だが、デイサービスに行くたびに、「トイレ前の廊下に置いてあるソファでうたた寝している」とケアマネジャーから報告があった。
それに対して父親は、
「寝不足なんだと思います。デイサービスの前日はちゃんと準備ができてるか心配になるみたいで、夜中に何度も起きてデイサービスの持ち物を確認しています」
と答えていた。
「母が何度も起きているのを知っているということは、一緒に寝ている父も目が覚めてしまっているということです。父はまだ仕事をしているので、夜、眠れないというのはしんどいと思いました」
とりあえず父親のために、月に一度ショートステイを利用することにしたが、雨宮さんは迷っていた。
「『両親と同居しようかな』と考えていましたが、『同居すると長男が転校になっちゃうからな……』と気持ちが揺れ動いていました。けれど、父の介護疲れや、頻繁に実家に通っている長女の負担を考えると、状況を良いほうへ変えたかったこと。そして母が私のことをどんどん忘れていくのが嫌で、もっと一緒にいたいなと思ったこと。さらに私が失職していたことと、次男が小学校に上がるタイミングだったことが重なり、『同居するなら今なのでは?』と考えていました」
夫に相談すると、「いいんじゃない?」と言ってくれた。義母と夫の弟にも報告すると、こちらもすんなり了承してくれた。
その後、長女と父親がいる時に「同居しようと思うんだけど、どう思う?」とたずねたところ、2人とも「いいね! いつ引っ越してくる?」と乗り気。別の機会に下の姉に相談すると、「同居すると大変だよ。よく考えたほうがいいよ」と心配してくれた。
実は雨宮さんの実家は、両親が父方の祖母を介護するために建てた二世帯住宅。玄関も2箇所あり、2階にも水回りの設備が揃っているため、同居したとしてもプライベートが確保しやすいという利点があった。
そして2023年3月。ついに両親と18年ぶりの同居を開始した。