パターン③経営者に請われ入ったが、現場の協力を得られない

ハイクラス層の転職となると、経営トップとのやりとりだけで入社が決まるケースも多いものです。実はそこにも落とし穴が潜んでいます。

企画職として経験を積んできたCさんは、以前からSNSや業界イベントで交流があったベンチャー役員・Xさんから「うちの会社に来ないか」と誘われ、応じることにしました。ところが、入社早々、既存社員の自分に対する態度がよそよそしいことに気付きます。

実はXさんは大きな組織改革を進めようとしていて、多くの社員から強い反発を受けていました。逆風が吹く中、自分の「仲間」を増やすためにCさんを招き入れたのです。

Cさんは所属部署のメンバーと関係を築こうにも、最初から「敵」と見なされ、警戒心を抱かれている状態。情報共有のためのコミュニケーションもうまくいかず、苦戦することになりました。

Cさんほどの状況はそうそうないものの、「面接で経営トップが話していたことが、現場のメンバーには認識されていない」ということはありがちです。経営トップから「○○の推進を任せたい」と言われて入社したものの、現場メンバーの協力が得られずに先に進められないケースがよく見られます。

このような状況に陥らないためにも、経営陣との面談だけで入社を決めるのではなく、所属部署のキーパーソンや部下となるメンバーなど、さまざまなポジションの人と会わせてもらい、話をすることをお勧めします。

以上、ハイクラス層にありがちな失敗のパターンをご紹介しました。豊富な経験と実績を持ち、自信があるからこそ、想定外の事態に戸惑うケースは多々あります。さまざまな状況を想定し、多方面からの情報収集を心がけていただきたいと思います。

構成=青木典子

森本 千賀子(もりもと・ちかこ)
morich 代表取締役 兼 オールラウンダーエージェント

1970年生まれ。93年リクルート人材センター(現リクルート)入社。2017年morich設立、CxOレイヤーの採用支援を中心に、企業の課題解決に向けたソリューションを幅広く提案。NPO理事や社外取締役・顧問等も務め、パラレルキャリアを体現した多様な働き方を実践。NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」出演。日経オンライン等のWeb連載のほか『本気の転職』等著書多数。2022年2月、日経新聞夕刊「人間発見」の連載にも取り上げられる。二男の母。