橋下徹氏もライドシェアを歓迎する発言をしたが…

さらに、8月27日には河野デジタル相がフジテレビのニュースで橋下徹氏と対談し、橋下氏が「先進国でライドシェアをやっていないのは日本だけ」と発言した。それを受けて河野氏が「例えばタクシー呼んでから何分で来る割合が何パーセントとか、駅の待ち時間を何分以内にするなどの水準を作り、できないなら自動的にライドシェアを入れるというようなルールを決めれば良い」という理論も展開している。

自交総連書記長の髙城政利さん
自交総連書記長の髙城政利さん(提供=髙城さん)

しかし、そもそもの橋本氏の発言には大きな嘘があったと髙城氏は指摘する。

「先進国でライドシェアを導入していないのは日本だけというのは、悪質なデマです。ヨーロッパ全域と韓国、台湾はライドシェアを厳しく禁じています。グレーゾーンで営業開始後に、多くの問題が生じたことで、これは無理だろうと、政府や司法機関が禁止したのです。これらの地域でUberなどを使って実際に来る車両は、ハイヤーかタクシーの認可を受けた事業者であり、そういう意味で、日本でUberのアプリからタクシーを呼べることと同じなんですよ。また、ライドシェアなどで働くギグワーカーに労働者の権利を認める判決も、世界中で相次いでいます」

アメリカではライドシェアでの性的暴行事件が年間998件

さらに、アメリカでは強盗や性犯罪でライドシェアのドライバーが加害者にも被害者にもなるケースが増えているという。

ここに、衆議院国土交通委員会(2023年3月22日)の政府答弁で示されたデータを引用しておきたい。

【図表1】日本のタクシーとアメリカのライドシェアの比較(2020年)
出典=第211回国会「国土交通委員会第5号(令和5年3月22日)」国土交通省自動車局長・堀内丈太郎氏の答弁より

他に、自交総連副中央執行委員長の德永昌司さんは次のような問題点を指摘する。

「タクシーが人手不足だからライドシェアしかないと言う人がいますが、確かにコロナ禍の3年間でタクシードライバーは全国で約6万人、2割減少し、その影響でタクシーに乗りにくい状況が生じているのは事実です。でも、最近ではタクシードライバーが増えており、3~6月で約1000人増加しました。

これは運賃の見直しが進み、収入が上がったためですが、ライドシェアが解禁されれば収入は当然激減し、プロのドライバーがワーキングプアになっていくことが予想されます。そもそもUber Eatsも生業として成り立つかと期待されましたが、ワーキングプアが拡大していったばかりで、それで『生活も十分にできないような産業をますます増やしていいのか』という問題点もあると思います。

導入を促進する人たちは、儲かるなら市場参入したい。もちろん最初は良いんです。Uber Eatsも最初は何十万円も稼いでいるなんて人がいましたが、登録者が増え、やる人が増えてからは、マクドナルドの前に地蔵のように並んで注文が入るのをひたすら待つ人だらけというのが現状ですよね?」

中央区八重洲
写真=iStock.com/KathrynHatashitaLee
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