アメリカのUberのように一般人が自家用車でタクシーの代わりをできるライドシェア。日本でも政治家や著名人が導入すべきだと主張している。タクシー業界を取材した田幸和歌子さんは「実はアメリカではライドシェアでの性暴力事件が多発。世界でも導入していない国の方が多い。そんな問題ありのライドシェアを、日本はタクシー不足を解消する前に始めようとしている」という――。
大阪府の吉村洋文知事(左)からライドシェアに関する要望書を受け取る小泉進次郎元環境相
写真=時事通信フォト
大阪府の吉村洋文知事(左)からライドシェアに関する要望書を受け取る小泉進次郎元環境相=2023年12月1日、国会内

メディアが報じようとしない「ライドシェア」の危険性

12月1日、大阪・関西万博に向けライドシェア導入を目指す吉村洋文大阪府知事が小泉進次郎元環境相と面会。吉村知事は、ライドシェアの運営にタクシー会社だけでなく新規事業者の参加を認めることを提案した。小泉氏も「万博では空飛ぶクルマも自動運転もやるのに、ライドシェアがないなんて、そんな滑稽こっけいなことない」と賛同の意を示した。

観光地などでのタクシー不足が日々テレビなどのメディアで盛んに報じられ、ライドシェア導入の必要性が叫ばれている。「ライドシェアに反対するのは、タクシー業界が既得権益を守りたいから」などと言う者もいる。

しかし、メディアが報じようとしない「ライドシェア」の危険性があると、自交総連(ハイヤー・タクシー、自動車教習所、観光バス労働者の組合)書記長の髙城政利氏は指摘している。

「ライドシェアはUberなどのアプリに登録すれば、誰でも行うことができるので、本来タクシードライバーに必要な2種免許を持たない素人のドライバーが、アルコールチェックや体調確認を受けることなく、人命を輸送してしまうわけです。また、アプリの登録を誰かが代表してやっておけば、オーダーが来たとき、免許を持っているのか、お酒を飲んでいるのかもわからず、体調が悪くとも睡眠不足でも、とりあえず手が空いている人が対応するなんてこともできてしまう。

外国人を使って中抜きするなんてことも考えられます。利用者の命と安全が危険にさらされるわけです。斉藤鉄夫国土交通大臣は、8月25日の会見で『ライドシェアについては運行管理や車両整備に責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、安全の確保の観点から問題がある』と指摘しています。

責任はドライバー個人が負うことになっているのも、大きな問題ですよね。ライドシェアが導入されると、実際に誰が乗るのかわからないということで、車両保険もあがるでしょうし、事故があっても保険会社は支払わないケースが増えていくことが予想されます」(髙城氏)

タクシー業界の規制改革をすべきだと導入が推進されてきた

日本でライドシェアを導入しようとする動きは、2015年以降ずっと続いてきた。推進派は「規制改革会議」「国家戦略特区」「規制のサンドボックス制度」「新しい資本主義実現会議」などの政府会議や制度を用いて、解禁を主張し続けてきた。

そこにコロナ禍の影響を受けてのタクシー乗務員減少と、需要の戻りによる需給のミスマッチが起こり、いよいよ本格的にライドシェア導入の声が高まっているのが現状だ。

そうした流れの中、8月19日には菅義偉前首相が「観光地が悲鳴を上げている」「現実問題として(タクシーが)足りない。これだけ(運転手の)人手不足になってきたら、ライドシェア導入に向けた議論も必要だ」と発言。