お金が貯まる家庭、貯まらない家庭の特徴

私はさまざまな富裕層の世帯を見てきましたが、お金に関する意識はおおむね2つに分かれます。お金が貯まる家庭というのは計画性があって、ムダなところにお金を使わない。決してケチということではなく、使うべきところには多少大きい額でも使い、ムダなものには1円も払いたくないという考え方です。一方、お金が貯まらない家庭とは、家計管理がズボラなんです。何にお金を使っているかをあまり把握しておらず、ムダなものにお金を使い過ぎてしまうのです。

お金の管理ができていないということは、自分たちの将来も見据えていないので、何かあったら一気に生活が傾いてしまいます。いくら年収が高くても、計画的に貯蓄や資産運用をしていない家庭は、お金が回らなくなった段階で崩壊しますから、家計管理は欠かせないのです。

家計を把握するために大切なのは家計簿

年収が高い世帯ならではの危ないお金の使い方もあります。その一つが不動産投資。お金に余裕が生まれると、別荘やリゾートマンションを購入したいと考える人もいますが、土地の将来性をしっかり検討することが大事。有名別荘地でも高齢化が進んで廃れていく地域では、不動産価値がどんどん下がってしまうからです。アパート経営する場合も、地方で若い人が減っている地域では将来の保証がないので、場所を見極めることが欠かせません。不動産の場合は売りたいと考えても、買い手がつかなければお金に換えられません。固定資産税や高い管理費を売れるまで払い続けなければならない難点があります。まさに「負動産」となって、経済的にも精神的にも大きな負担でのしかかってくるのです。

そうならないためには、やはり家計の把握をしてくださいということです。自分のお金がいくらあって、毎月どのくらい出ているのか、出費の内訳もちゃんと把握してほしいと思います。「家計簿は面倒」だと言う人もいますが、今はゲーム感覚で取り組める家計簿アプリもあるので、少しずつ習慣づけていくといいでしょう。

販売台帳に記入する日本人女性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

資産運用をする場合は自分でまず勉強すること。株や投資信託などの金融商品もちゃんと理解したうえで選び、よく知らないものにはお金を投じないということです。

そしてご家族がある場合は、必ず夫婦であるいは子どもを交えてお金について話し合わなければダメです。それぞれの思いを一回ちゃんと整理すること。お金のことは夫婦で中身を把握しておかないと後でもめることがあり、それは歳をとってからのほうが結構きつい(笑)。今のうちからちゃんと話し合って、同じ方向を向いて進んでいくことが必要です。

これからどんな生活をしていきたいのか、家族のライフプランを描いてみる。それで終わりではなく、年一回くらいは定期的なメンテナンスも忘れずに。

人はお金がある分だけ使ってしまう生きもの。無くなってから慌てるのではなく、普段から収支を把握することが大切です。

構成=歌代幸子

市川 雄一郎(いちかわ・ゆういちろう)
投資教育家/Global Financial School校長

CFP/1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教壇に立つほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。またラジオNIKKEI『投資のベースキャンプ』のパーソナリティー、TBSドラマ『トリリオンゲーム』の投資監修などメディアでも活躍。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)、最新監修書籍『0からわかる!株超入門』(ソシム)がある。