ミッションはアジアと日本女性の地位向上

【木下】さまざまな経験をされてきて、今ご自分の使命はなんだと感じていますか?

【田中さん】女性は100点満点になってやっと「できます」と言う人が多い。でも男性の多くは60点しかできていないのに「できます」と言うんです。私が先輩から背中を押してもらったように、自分では60点だと言っても、周囲から見れば「できている」女性たちの背中を押してあげることが自分の役目だと思っています。元ゴールドマンサックス証券のキャシー松井さんによると、女性を昇進させるためには、4回は打診してほしいということでした。

【木下】リーダーズサロンに参加している多くの方は、ヘッドハンティングされる機会もあると思います。田中さんのご経験から何かアドバイスをお願いします。

【田中さん】私自身は複数社で仕事をしてきていますが、転職を決める際に大切にしている3つの要素があります。1つは、「自分の価値観と会社の価値観が同じかどうか」。2つめは「自分がそこでどれだけ貢献できるか」。そして3つめは「プロフェッショナルとして、そして母親として両立できるか」です。

価値観が合わない場所で働くのは、生活のために働くとしても一番ツラいし、貢献できないのもつらい。ですからここはもっとも大事にしています。そしてプロとして母として両方で幸せになれること。皆さんもぜひ、自分が仕事をするうえでの大切な要素を書き出すことをおすすめします。

リンクトインのビジョンは「世界で働くすべての人のために、経済的なチャンスをつくり出す」です。私はインドネシアにいた期間が長かったので、アジア、そして日本の女性の地位向上が私のミッションだと思い続けています。会社のミッションと自分のミッションがぴたりと合うと思い、今回オファーを受けました。

【木下】日本のジェンダーギャップは、先進国中最下位です。管理職割合も日本は12%、米国は40%。この状況を変えるには、やはり女性たちのスキルアップが必要でしょうか?

【田中さん】長時間労働で能力を示すのではなく、女性がどんなスキルを持っているか見せることが必要です。特別な勉強で得るものだけではありません。キャリアの中で培ってきた実務経験そのものがスキルとして身に付いているはず。ぜひご自身のスキルの棚卸しをしてほしいのです。

今後は人材が不足する時代になります。そんなときに、自分の持つ能力をプロフィールとともに弊社のようなビジネスプラットフォームに公開してあれば、外にアピールできます。私がリンクトインに参画した経緯には、ジェンダー格差に貢献できるのではないかという思いもありました。

自身のスキルを公開することで、例えば、社外取締役などへのアプローチ機会も増えてくるはずですし、実際に取締役になったときにもそのスキルをもって貢献できるはずです。