現役女性管理職や役員たちが集う日本最大級のサロンを自負する「プレジデント ウーマン リーダーズサロン」。サロンイベントの第4回は、2023年9月27日にオンラインで開催。ゲストには、世界最大級のビジネスプラットフォームを展開する「LinkedIn(リンクトイン)」日本代表の田中若菜さんを迎え、『プレジデント ウーマン』編集長・木下明子と「トップリーダーをめざすためのキャリア形成と学び」をテーマに対談。そのウェビナーをリポートする。
大学の階段教室に座ってこちらをみている女性
写真=iStock.com/M_a_y_a
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隙間時間の学びもコツコツ続ければ1年後に差が

第4回「プレジデント ウーマン リーダーズサロン」は、世界的企業の日本代表を迎え、ウェビナー形式で開催された。

今回は、現役リーダーであるサロンメンバーに事前に行った「学び」に関するアンケート結果を基にテーマを決定。「LinkedIn(リンクトイン)」日本の代表として、実際に企業トップとして活躍する田中若菜さんとともに、「リーダーとしてのマインドセット」「スキル」など、キャリア女性に本当に必要なこととは何かを考える会となった。

【プレジデント ウーマン編集長・木下】田中さんは、新卒でコンサルティング会社に入社後、一度退職し、自費で米国のハーバード・ビジネス・スクールのMBAを取得されたという経験をお持ちです。米国やフランス、アジアなど、海外での勤務経験も豊富で、2023年3月に世界的なビジネスプラットフォームを展開する「リンクトイン」の日本代表に就任されました。これまでのキャリアと培ってきたスキルを簡単にお話ください。

【LinkedIn田中さん】「新卒でコンサルティング会社に入り、その後MBAを取得した後は、キャリアチェンジをしてマーケティング畑に。化粧品メーカーのブランドマネジャーとして働いた後、出産などライフステージの変化がありました。その後、東日本大震災が起こり、国会事故調査委員に参画。そして製薬会社に移り経営戦略を担当し、その後グーグルの日本法人に8年半ほどいました。その間、実にさまざまなスキルを蓄積してきました。コンサルティングスキル、育休中に取得したコーチングのスキル、ブランドマネジメント、マーケティング、ガバメントリレーションズ、そしてグーグルでは、デジタルマーケティングやDXのスキルを得ました。あとはパートナーシップの統轄をしていたのでそうしたスキルや営業のスキルでしょうか。

LinkedIn日本代表の田中若菜さん
写真=本人提供
LinkedIn日本代表の田中若菜さん
さまざまなキャリアと経験からスキルを培った

【木下】華麗なキャリアと豊富なスキルですね。20代で私費留学をされるほど、学びたいと思った理由は何ですか?

【田中さん】当時は「キャリアチェンジしたい」その一心でした。ハーバード・ビジネス・スクールは選択肢にはありませんでしたが、先輩から「若菜ちゃんならできるよ!」とアドバイスをいただき、一念発起してチャレンジしたら合格。そこから人生がすごく変わった実感があります。

【木下】MBAでの学び以外に、誰にでもできる学びの方法などあれば教えてください。

【田中さん】皆さん日々忙しくて大変だと思いますが、実は隙間時間って結構あると思うんですね。それこそ仕事の合間の10分間とか、通勤時間とか。そんなときに、ちょっとずつeラーニングで学んではどうでしょう。そういった少しの時間でのリスキリングをやり続けることで、1年後には必ず差が出ます。一人ひとりがオーナーシップを持ち、自分の次のキャリアを考え、どういうスキルをつけていくか考えることが必要でしょう。40代、50代、そして60代でも続けていくことが活躍できる場所を広げ、やりたいことも見えてくるのだと思いますね。

ミッションはアジアと日本女性の地位向上

【木下】さまざまな経験をされてきて、今ご自分の使命はなんだと感じていますか?

【田中さん】女性は100点満点になってやっと「できます」と言う人が多い。でも男性の多くは60点しかできていないのに「できます」と言うんです。私が先輩から背中を押してもらったように、自分では60点だと言っても、周囲から見れば「できている」女性たちの背中を押してあげることが自分の役目だと思っています。元ゴールドマンサックス証券のキャシー松井さんによると、女性を昇進させるためには、4回は打診してほしいということでした。

【木下】リーダーズサロンに参加している多くの方は、ヘッドハンティングされる機会もあると思います。田中さんのご経験から何かアドバイスをお願いします。

【田中さん】私自身は複数社で仕事をしてきていますが、転職を決める際に大切にしている3つの要素があります。1つは、「自分の価値観と会社の価値観が同じかどうか」。2つめは「自分がそこでどれだけ貢献できるか」。そして3つめは「プロフェッショナルとして、そして母親として両立できるか」です。

価値観が合わない場所で働くのは、生活のために働くとしても一番ツラいし、貢献できないのもつらい。ですからここはもっとも大事にしています。そしてプロとして母として両方で幸せになれること。皆さんもぜひ、自分が仕事をするうえでの大切な要素を書き出すことをおすすめします。

リンクトインのビジョンは「世界で働くすべての人のために、経済的なチャンスをつくり出す」です。私はインドネシアにいた期間が長かったので、アジア、そして日本の女性の地位向上が私のミッションだと思い続けています。会社のミッションと自分のミッションがぴたりと合うと思い、今回オファーを受けました。

【木下】日本のジェンダーギャップは、先進国中最下位です。管理職割合も日本は12%、米国は40%。この状況を変えるには、やはり女性たちのスキルアップが必要でしょうか?

【田中さん】長時間労働で能力を示すのではなく、女性がどんなスキルを持っているか見せることが必要です。特別な勉強で得るものだけではありません。キャリアの中で培ってきた実務経験そのものがスキルとして身に付いているはず。ぜひご自身のスキルの棚卸しをしてほしいのです。

今後は人材が不足する時代になります。そんなときに、自分の持つ能力をプロフィールとともに弊社のようなビジネスプラットフォームに公開してあれば、外にアピールできます。私がリンクトインに参画した経緯には、ジェンダー格差に貢献できるのではないかという思いもありました。

自身のスキルを公開することで、例えば、社外取締役などへのアプローチ機会も増えてくるはずですし、実際に取締役になったときにもそのスキルをもって貢献できるはずです。

トップリーダーに必須なのはコミュニケーションスキル

【木下】トップリーダーにもっとも必要なスキルとは何でしょうか?

【田中さん】コミュニケーション力でしょうか。自分を押し出すのも時には大切ですが、誰に対しても「私はあなたの味方ですよ」というのを醸し出すと対人関係も営業もうまくいきますよね。相手に合わせてコミュニケーション方法を変えることはとても大切です。例えば国や話す言語によっても、相手に受け入れられやすい話し方、声のトーンがあるのではと思います。私自身、日本語で話すときは柔らかい口調、英語の時ははっきり、やや低めの声で話すことを心がけたりしています。

【木下】田中さんご自身、もっとも役立っているスキルはなんですか?

【田中さん】私のリーダーシップスタイルには、やはりコーチングのスキルが一番ベースになっていると思います。いろんなスタッフのやりがいや強みを引き出し、レベルアップを可能にしてあげることで、最終的には会社、チーム、そして自分自身が輝けます。私は、みんなが輝くことで自分は輝くと信じているので、そうした意味で、自分のチャレンジはみんなのチャレンジでもあり、チームで達成できるようにさまざまに取り組みたいですね。組織として仕事ができないとトップリーダーは務まらないと思っています。

実は今回初めてトップのポジションに就任しましたが、思っていた以上に「自分は試されているな」と感じます。ただ、トップだからこそできるチャレンジに私自身がワクワクしています。ここでの“学び”があれば、次はもっとうまくやれると、ポジティブにやりがいを感じています。お陰さまで自分に足りない部分を補ってくれる仲間もいますから、みんなに頼りながら、一つひとつ乗り越えています。

(向かって左)高橋若菜さん、(右)木下明子
撮影=プレジデント ウーマン編集部
(向かって左)田中若菜さん、(右)木下明子

対談の後は、参加メンバーからの質疑応答の時間に。ある人材系企業で300人を超える部下を抱えるメンバーは、「ポジションが上がるにつれ、会社から課せられる課題や目標が大きくなる。責任も重く、さらに人事の課題も。自分が本来やりたいミッションに手を付けられない」と悩む。

それに対し「人事問題の解決はプロセスにすごく時間がかかるけれど、解決に至らない場合も。そんなときは、自分だけで解決しようとせず、どんな部署にも経験者はいるので、アドバイスを仰いでください。自分ができることできないことをすぐに判断して抱え込まないことが大切です。人に助けを求めるのがベスト。人事問題でどんな決断をしたか、後で問題にならないよういろんな人を入れておくのは経験上、とても大事です」と田中さんは自身の経験からアドバイスした。

ほかにも「ダイバーシティ推進での取り組み」「仕事と家庭の両立」「採用」など、さまざまな質問や悩みが飛び出した。

リーダーとして働くメンバーそれぞれの悩みは尽きないが、田中さんはその一つひとつに丁寧に向き合い答えてくれた。そして、今後のさらなる上のキャリアをめざすには「ネットワーキングの大切さと、さらに自身を商品に例えてマーケティングの観点でどう考えるかが必要」だと最後に締めくくった。

「プレジデントウーマン リーダーズサロン」、次回は、2023年11月7日(火)19:00〜20:30(場所:永田町/プレジデント社内)、久々にリアル形式での講演会の開催が決定。ゲストはネット証券グループ大手「マネックスグループ」代表執行役社長CEO兼「マネックス証券」代表取締役社長である、清明祐子様をお迎えする。有名企業の代表の話を直接聞ける機会をぜひお見逃しなく!

尚、こちらのイベントは、サロンメンバー限定、申込制の有料イベントです。
サロンメンバーに未登録の女性リーダーの方は、まずは下記からメンバー登録をお願い致します(登録費、月会費など無料)。登録後、当イベントにお申し込みください。