「強い生きがい」は死亡リスクを低減する

スローカム博士の主張を裏付けるように、最近の研究では、人生の目的意識を強く持つことが、死亡率の低下や病気、障害、認知障害のリスクの低減につながることが示されています。

ある研究では、百寿者(100歳以上の人)の子どもは、その配偶者や同年代の人と比べて、著しく高い人生の目的(purpose in life=PIL)を持っていることが示されました。研究者たちは、「人生の目的」(PIL)が高いと「加齢にともなう病気を遅らせる役割を果たし、がんにつながる炎症や免疫の状態を遅らせる可能性があると結論付けています。

ミシガン大学の最近の研究では、人生の目的を強く意識することで、身体的・精神的な健康の改善につながり、生活の質を全体的に向上させることが明らかにされました。研究者たちは50歳以上の約7000人を調査し、PILスコアが最も高い人は、最も低い人に比べて死亡する確率が2.5倍低いことを発見しました。

日本でのほかの研究では、主観的な幸福感である「強い生きがい」を持つことは心血管疾患のリスク低減と関連し、「強い生きがい」を持たないことは死亡率の上昇と関連することが示されています。

強い生きがいを持つことは、寿命の大幅な延長にも関連しています。人生の目的に関する10の専門的研究を調査し、合計13万6000人以上を分析した研究では、人生の目的意識を強く持つことは、全死亡リスクの低減と関連すると結論付けています。

また、成人を10年間にわたって追跡した研究では、人生の目的が大きいほど、アロスタティック負荷(慢性的なストレスによる身体の消耗)のレベルが低いことが予測されました。アロスタティック負荷は、神経内分泌系や循環器系、免疫系、代謝系に関連するバイオマーカー(生理学的指標)を分析する尿検査と血液検査によって測定されます。

この研究は、心の中に生きるための強い理由を持つことが、身体にポジティブな生物学的利益を長期的にもたらすことを決定的に示した、最初の研究の一つであるという点でユニークなものです。

長期的な願望や日常の喜びが原動力に

劇的寛解を経験した人たちは、生きる強い理由を見つけるための万能なアプローチはないことを教えてくれます。ある人は目標志向タイプで、未来を重視し続けることを好みます。ある人は目標をストレスに感じ、その代わりに毎日の新たな喜びを大事にします。

自己愛やセルフケア、そして幸福感を高めることの重要性の高まりから、私たちはこの治癒要因を探求する新しい方法が爆発的に増えているのを目の当たりにしています。

1981年~90年代半ば頃までに生まれたミレニアル世代は、日常生活に幸福感を、仕事に意味を見出したいと考えていると言われています。しかし、このトレンドはもっと広範囲におよんでいるのかもしれません。おそらく社会全体が、働きすぎ、予定を詰め込みすぎ、スマホなどの画面を見すぎることは、じつは充実した人生にはつながらないということに、ようやく気づいたのかもしれません。

目標を重視する劇的寛解者たちは、治癒への旅を続けるために(そして血液や酸素、気の流れを強くするために)長期的な願望を持つことを好みます。たとえばあなたも死ぬ前に、娘の結婚式でバージンロードを歩きたい、ずっと書きたかった小説を書き上げたい、初孫の誕生に立ち会いたい、あと50カ国を旅したいと思っているかもしれません。

治癒への旅で長期的な目標を重要視した劇的寛解者の一人が、シンディ・ハンドラーです。彼女は2015年に、44歳でグレードIIIの未分化軟部肉腫という悪性の髄膜腫瘍と診断されました。シンディはこう振り返ります。

「命にかかわるような診断や、その後のショックと恐怖に備える方法なんて、実際にはありません。私の脳腫瘍が発見されたのは、新学期がはじまって3週間目のことで、娘たちが14歳、10歳、7歳のときでした。

また、私たちははじめての家を購入したばかりで、海のそばに住むという夢を実現するために、忙しく暮らしていました。私たち家族に起こるすべての大きな転機を想像したときに、娘たちが私の扶養とアドバイスをどれほど深く必要としているか。

家族は、私が毎日目覚め、人生を積極的に変えていく原動力となりました。ここで子どもたちが成長していくのを見守るために必要なことは何でもするつもりでした」

脳の外科手術や10の劇的寛解要因を含む、従来の医療と統合医療の最良の部分を組み合わせることで、シンディは途方もない困難を克服し、5年経っても病気の痕跡はありません。治癒の旅は彼女に新たな生きる理由を与え、現在では、生命を脅かす病気を患っている人々が、心と身体のつながりやライフスタイルの変化を通じて、本来持っている幸福感を再発見できるように指導しています。

シンディはまた、ラディカル・リミッション・ワークショップの公認インストラクターでもあります。彼女と彼女の夫は最近、長女を大学1年生に送り出すという大きな節目を迎えました。

シンディのような劇的寛解者の中には、長期的な目標に向かう人もいれば、未来志向の希望から遠ざかり日常生活の喜びを再発見しようとする人もいます。こうした劇的寛解者の生きる理由は、日々の生活を改善することにあり、たとえば朝日や夕日を見たり、自然の中を散歩したり、友人や家族と充実した時間を過ごすなどです。

がんの女性とその子供たち
写真=iStock.com/Roberto Jimenez
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