学生の時に何と呼ばれていた?
いっぽうで、大きく構えているマネージャーであれば自然に風通しはよくなります。ちなみにこんな口癖の管理職がいました。
「もっと、私にラクをさせてくれ」
一見無責任に聞こえますが、いざというときはしっかりと部下を守っていました。取引先に謝罪する時や、経営層を説得する時は矢面に立ちます。「ラクをさせてくれ」というのは、マイクロマネジメントをしないという宣言でもあります。実際に、とてもいいチームで業績を伸ばしていました。
なお呼称についていえば、先にも書いたようにルール化は新たな強制を生むので疑問があります。ただし、呼称が風土をつくることもたしかでしょう。
私が知っているとある企業では、新人が配属された時に「学生時代何と呼ばれていたか?」と訊ねて、みんなでそう呼ぶようにしています。苗字でも、ファーストネームでも、ニックネームでも構いません。新人にとっては、新しい環境になじみやすいですし、いろいろな呼び方が飛び交うので、自然と上下を意識しない空気になっています。
人を呼ぶ、という行為は相手との関係を規定するものですし、時には「畏れ」の感情を伴います。いろいろな工夫はあると思いますが、かえって息苦しくなることは避けるべきでしょう。
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。博報堂に入社。2004年退社、独立。現在マーケティングおよび人材育成のコンサルタント、青山学院大学経営学部マーケティング学科講師。著書に『電通とリクルート』(新潮新書)など。