人工授精→体外受精→胚移植

この一連の流れのどこかに問題があると、妊娠できない状態となります。

その原因は体だけにあるわけではありません。単に、性交と排卵の周期が合っていない場合も多いのです。そこでまずは、性交周期の指導(タイミング法)が行われます。

続いて、精子が卵管に到達できないという問題が考えられます。これは、その通り道にある頚管や卵管の一部が閉塞へいそくしていたり、ホルモンの状態が悪いため精子を殺してしまう、または、精子自体の運動能力が弱い、などの理由が考えられるでしょう。

この場合は、夫の精子を採取し、頚管を越えて卵管上部にまで注入するという方法(AIH=人工授精)で、受精を促します。

人工授精のイラスト
イラスト=Takayo Akiyama

それでも結果が出ない場合、体外にて、精子と卵子が出会う場を人工的に作ることになります(生殖補助医療=ART)。これにもいくつか段階があります。

生殖補助医療のイラスト
イラスト=Takayo Akiyama

旧来実施されていたのは、卵子と精子を取り出し、それらを出会わせ受精させ、そのまま卵管に戻すという方法(ZIFT)でした。確実に出会ったら、あとは体の中の自然なメカニズムに任せるのです。

ここから進歩して、受精した卵を培養してから、卵管ではなく子宮に直接戻す方法(胚移植法)が生まれ、今ではこちらが一般的といえます。

顕微授精+胚盤胞移植

さて、卵子と精子を出会わせても、自然の成り行きでは受精しないということもあります。たとえば、精子の運動能力が極端に弱い、精子の数が少なすぎる、卵子の卵殻が硬い、などの問題がある場合です。そうした時には、顕微鏡で観察しながら精子を卵子の中に打ち込み、卵核に到達させることで、受精確率を上げる方法(ICSI)が選択されます。ここまで行うことで、受精確率はかなり高くなりますが、それでも100%には遠く及びません。

こうして、体外で受精した卵を、今度は子宮に戻す(移植)のですが、それにも、二通りの方法があります。1つは、2日程度培養した後に子宮に戻すという早期移植。この方法でうまく着床しない場合は、4~5日培養して、胚の周りに外壁ができた状態(胚盤胞)にて戻します。説明した通り、自然妊娠でも子宮に着床するのは、受精後5~6日かかります。ですから、体外受精でもこの状態まで育てて、子宮に戻した方が確率はあがります。