旅の終わりにメスが多くのオスの中から1頭を選んで交尾
さて、メインイベントは旅の終わりに、1頭のメスと交尾したい何頭かのオスが本気で追いかけ始めます。そして、その中でメスがオスを1頭だけ選び、交尾に至ります。他のオスは残念なことに、何千キロメートルも一緒に旅をしてきたのに交尾ができなかったということになります。
その年の体調と「運」のいいオスが、メスとカップルになり、その他の残念なオスに祝福されて、地球規模の壮大な婚活イベントは終了となります。それで交尾できなかった残念なオスたちは、また来年会いましょうということで、解散となります。翌年は、また違うオスが選ばれるかもしれません。
ここで言いたかったことは、直接生殖に関わらない個体にも、この婿選びのイベントを盛り上げるという、しっかりとした役割があるということです。人に置き換えて考えると、私たちも確かに似たようなことをやってきました。合コン(合同コンパ)、合ハイ(合同ハイキング)など、複数の男女で楽しく盛り上がるイベントでは、自然に恋が芽生えることはよくある話です。
さて話を戻します。ヒトの場合、生物学的にはメス・オス・子供以外に4つ目の分類があります。それが、「シニア」です。シニアは大体年齢の上の方が多く、直接生殖には関わりません。そして、集団をまとめ、文化を継承する重要な役割があります。
この20年で男性の生涯未婚率が約13%から28%に上昇
シニア以外にも、直接生殖に関わらない人は大勢おられます。結婚しない人の増え方は、実はもっとすごいことになっています。日本では結婚した夫婦の子供が圧倒的に多いので、この「結婚しない人の割合(未婚率)」の増加が少子化の一番の原因と考えられています。未婚率が男女ともに1990年代から、ものすごい勢いで増えているのです(図表1)。
男女で1.6倍ほど未婚率が違う理由は、男性は複数回結婚する人が多いということです。もちろん、結婚しようがしまいが個人の自由です。ただ、結婚したくてもできないような状況があるとすれば、それを是正するのは社会の役割であり、社会の「ベース」を作るシニアに、何らかの貢献ができる可能性はあると思います。