「ちゃんとやりなさい」だけではわからない
どうすれば先程の店長のように、手を上に挙げたまま無言で歩いて行ってしまうことができるのでしょうか。
このときには、声の大きさや、にこやかさにも注意しながら演習し、心構えに加えて、技術面についても詳細まで説明します。
お客様よりも小さな声でしか話さない新入社員もいますが、彼らは自分の声のほうが小さいことや、それが与えるネガティブな印象のことなど、考えたこともないのです。こうした点も解説していきます。
人が実演している様子、よい例、わるい例を見ることで、新入社員は理解を深めていけるものです。
腰を低くするとはどんな感じか。「こちらへどうぞ」とは、どんなふうに言うとよいのか。後を付いて来ていただくのに、どんなジェスチャーを使うべきか。一流の立ち振る舞いとはどんなふうか、グループワークによって詳細まで考察していきます。
こうした演習を行うことで、受付から応接室への案内も相当に上達し、対人コミュニケーションについて考えるきっかけになります。
「ちゃんとやりなさい」と言うだけとは違うことが、おわかりいただけるでしょう。
客観的な評価を新入社員に伝える
「あいさつ、返事をしない」「気が利かない」「積極的に動くことができない」と言われて、気分のよい新入社員がいるものではありません。
しかし、先輩社員たちがそのように感じていたら、それは伝えなくてはなりません。
その際、私の場合は、4月から夏にかけて全国的に行われている新入社員研修の中で、目の前にいる新入社員たちのパフォーマンスが、どういうレベルにあるかを率直に話すことにしています。
彼らを非難したりするためではありません。
全国でほぼ同時に実施される新入社員研修の中で、客観的に見て、どんなレベルと言えるのか、そのように評価する根拠も伝えてあげるわけです。
この話には、新入社員は非常に関心を持って聞き入ります。
パンデミック前と後では、新入社員の何が変わったと(会社が)感じているかについても、彼らが理解できるように話します。
そうすることで、パンデミックという特殊な状況が、自分たちのコミュニケーションスキルにどういう影響を及ぼした(と考えられている)のかわかり、新入社員研修から学ぶべきことについても、一層よく考えるようになるのです。