年収1000万円を目指せるキャリアパスは…

倉部史記・若林杏樹『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)
倉部史記・若林杏樹『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)

この3種類の他にも、いわゆるキャリア官僚(国家公務員総合職)が国立大の事務局長や副学長として着任したり、地方自治体や民間企業の管理職が、人事交流の一環として国立大の管理職に就任したりといった例があります。

これらは大学職員を目指す方の一般的なキャリアパスとは言いがたいので、詳細は触れません。

この通り、国立大職員と言っても、キャリアパスによって就けるポストも年収も異なってきます。プロパー職員では年収1000万円に届く例は稀ですが、異動官職(文科省ルート)であれば40代後半~50代頃に1000万円を超え始める例も。たとえば20代~30代前半に、文科省への出向を打診される……なんて形で出向のチャンスを得たという事例が多いようです。

国立大はキャリアパスによって就けるポストが明確に分かれる

もっとも、数年おきに異動を繰り返すとなれば家庭生活への影響もありますし、文科省での勤務はハードです。出向を打診されてもワークライフバランスなどを優先し、断る方も少なくありません。地元で安定して働きたいという方にとっては、プロパー職員のキャリアパスのほうがメリットを感じられるのかもしれません。このようなキャリアパスが厳然として存在しており、生涯にわたって就けるポストが慣習として明確に分かれてしまうというのは、私大職員とはかなり事情が異なるところです。

国立大の管理職ポストは年々増加しているのですが、そのうち異動官職の方が占める割合は減少傾向にあります(1)。ここで挙げたキャリアパスの姿も少しずつ変化していくかもしれません。公立大も同様で、かつては設置自治体の職員がジョブローテーションの中で異動し、事務局を構成していましたが、公立大学法人になった後、独自採用のプロパー職員に置き換わりつつあります。ただ、こうした方々のキャリアモデルが明確に構築されているとは言えません。法人化されたとはいえ、慣習として残っている影響もまだまだあるでしょう。

〈注〉(1)飯塚潤「法人化に伴う国立大学幹部事務職員の人事管理の変化に関する分析」『大学経営政策研究』第10号(2020年3月)

倉部 史記(くらべ・しき)
追手門学院大学客員教授、進路指導アドバイザー、高大共創コーディネーター

日本大学理工学部建築学科卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。私立大学職員、予備校の総合研究所主任研究員などを経て独立。進路選びではなく進路づくり、入試広報ではなく高大接続が重要という観点から様々な団体やメディアと連携し、企画・情報発信を行う。全国の高校や進路指導協議会で、進路指導に関する講師を務める。著書に『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)、『大学職員のリアル』(中公新書ラクレ)など。

若林 杏樹(わかばやし・あんじゅ)
マンガ家

新卒で私立大学職員として入職。超ホワイトな職場で5年間働くも、長年の夢を叶えるために脱サラし、フリーの漫画家に。全くの無名、ツテなしから、SNSを営業ツールとして駆使し、天才美少女漫画家として幅広く活躍中。著書に『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)『学校では教えてくれない 稼ぐ力の身につけ方』(小学館)など。