グローバルな視野が広がり、マーケット形成の一助となる

これら3つの理由以外に、リラに投資し続ける理由があるのかと問われれば、それは「グローバルな視野が広がる」「マーケット形成の一助となる」です。

「グローバルな視野が広がる」とは、リラを通じてトルコの情勢を、そしてトルコを通じて世界情勢を実感できることです。とくに近年では、ウクライナ情勢において、NATO加盟国ながらもロシアとも独自の外交を展開するトルコの役割は大きく、その動向が注目されています。

「マーケット形成の一助となる」とは、不人気リラの買い手が少ない中で、その買い手となることで、マーケットの厚みが増し、一定の流動性が確保されます。それにより、(少し大げさかもしれませんが)資本主義経済の一翼を担っているとの自負を持てるわけです。

と、もっともらしい理由を挙げましたが、正直言って、いずれも、リラへの投資を正当化するため、ムリヤリひねり出した後講釈(こじつけ?)というのが本音です。

ただ、そんなリラ投資の大義名分によって、少しでも精神的に楽になるのなら(実際、私は楽になっています)、何とかひねり出した意味はあるのかなと思っています。

頭(理屈)よりも、気持ち(本能)を大切にすることも

さて、今回のタイトル(お金の専門家が負けてもトルコリラに投資し続ける3つの理由)から、今後、リラが上昇する何か強い根拠があるのか、と期待した人にとっては、期待外れだったかもしれません。

また、リラで含み損を抱える人に、淡い希望を抱かせてしまったのであれば、すみません。

今回挙げたもろもろの理由は、「お金の専門家であるFPの意見として、それはどうなの?」と、賛否両論あるかと思いますが、一個人投資家としての偽らざる本音を、素直に書かせていただきました。

FPの立場で、客観的にトルコの現状を考えれば、リラには投資するべきではないでしょう。

しかし、今回挙げた理由である「上昇に転じる可能性に期待」「ここまできて、やめられない」「高金利には、あらがいがたい」は、人間としての本能とも言えます。

そんな本能の強い人が、その本能を無理に抑えつけて、しんどい思いをするのであれば、頭(理屈)ではなく気持ち(本能)を優先して、投資をした方が良いというのが私の持論です。

ただし、リラに投資をするのであれば、それは投資ではなく投機であり、さらに言えば、趣味やギャンブルと捉えるべきでしょう。

そして当たり前ですが、「投資額がゼロになっても大丈夫」と思える程度の金額でやるべきです。

リラへの投資で迷っている人にとって、一つの考え方として、参考になれば幸いです。

そして、リラで痛い目に遭っている人には、そんな考え方もあるのだと、少しでも気持ちが楽になれば幸いです。

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー

1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。