モラハラに該当する行為で離婚を認めた判例は多い

モラハラという言葉が判例で明言されていないだけで、モラハラに該当する激しい暴言、精神的暴力を理由に離婚が認められている裁判例は多々あります。

それを、「夫からの暴言に一生耐えなければいけない」ととらえて、A子さんのように追い詰められてしまう方がいます。弁護士の中に、「離婚したい」という相談者の希望をかなえる道筋を示さず、紋切り型の法律的な回答をしてしまう人がいることもその一端です。

不倫や暴力、金銭問題など、モラハラ以外の理由で離婚している夫婦はたくさんいます。これといったトラブルがなくても、「すれ違いが続いた」などの理由で離婚する夫婦もいます。

それなのに、激しい暴言を受け続けている人が一生離婚できないはずはありません。

モラハラという言葉が広まり、さらに「モラハラでは離婚できない」という言葉が独り歩きしたことで、正確な知識が広まりにくくなっているのが現状です。

「モラハラかどうか」よりも「生活の見通しが立てられるか」

また、モラハラで離婚を考えている方が、「これはモラハラと言えるのか」という判断を弁護士である私に求めてくることもあります。相談に行ったら、弁護士に「こんなのはモラハラじゃない」と笑われたという話もよく聞きます。これは、モラハラであれば離婚できる、そうでなければ離婚できないという考えからだと思われます。

しかし、ここまでに解説した通り、「モラハラであれば離婚できる」「モラハラでなければ離婚できない」という二元論はどこにもありません。

むしろ現実的に問題なのは、離婚後の生活の見通しを立てられるかどうかです。どんなに証拠が豊富にあっても、住む場所がない、生計を立てる手段が全くないと、そのことの方が離婚への障壁となってしまいます。

「つらい、離婚したい」と思うのであれば、一歩を踏み出せば必ずゴールにたどり着けます。法律はその手助けになるので、解決の道筋を示してくれる弁護士に相談するようにしましょう。

堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士

北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。