出張経費にするために利用される

Aさんの別の部下であるCさんからは、朝から何度も電話メッセージが残っていて、折り返すと、どうしても今日時間をとってほしいと言います。

私が終日外出の予定で時間が取れないと言うと、「何とかして横浜市内で会ってくれ。新横浜の駅まで来てくれないか」と言ってききません。

無理をして予定を変更し、新幹線から降りてきたCさんに会うと、どうしても打合せをすべき大事な要件があるとのことだったのが、顔を突き合わせて座った喫茶室では、何とも要領を得ない世間話になります。

そして、しばらくすると「もう帰っていいよ。俺もこのあと他に用事があるから」と言うのです。

どうやら横浜で古い友人に会うことになっており、それにかかる費用をすべて出張経費としたかったようで、私と面会したという事実と、その証明となる喫茶室の領収書がほしかったのです。

複数枚の領収書
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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「ちょろまかし」はシリアスに捉えるべき

これらはほんの一例ですが、私から見ると、Aさんが残した負の遺産と呼ぶべきものでした。こんな体質が見事にできあがってしまっていたのです。

相談者の方は、取引先との関係は上手に維持すべきですが、直面されていることについては、それを反面教師としてシリアスに捉えたいところです。

もしかすると取引先の担当者がたまたま横着なだけでなく、そのような体質の組織と取引をしているのかもしれません。

少なくとも私たちは、自分たちの組織ではそんなことが起きないよう、モラルを保ちたいものです。

松崎 久純(まつざき・ひさずみ)
サイドマン経営・代表

もともとグローバル人材育成を専門とする経営コンサルタントだが、近年は会社組織などに存在する「ハラスメントの行為者」のカウンセラーとしての業務が増加中。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科では、非常勤講師としてコミュニケーションに関連した科目を受け持っている。著書に『好きになられる能力 ライカビリティ』(光文社)『英語で学ぶトヨタ生産方式』(研究社)『英語で仕事をしたい人の必修14講』(慶應義塾大学出版会)など多数。