個人間の精子提供では「出自を知る権利」が吹き飛ぶリスク

「選択的シングルマザーになりたいという方は、潜在的にはとても多いと思うので、病院で精子提供を受けられる対象を、結婚している夫婦に制限しないでほしいですね。制限をすれば、シングルや同性カップルのほとんどは、ネットを通して個人間で精子提供を受けようとするでしょう。そうなると子どもの出自を知る権利が吹き飛んでしまうリスクがあります。生まれてくる子どもの立場から見て、それは決して望ましいことではないと思うんです」

昨年出された特定生殖補助医療に関する法律案のたたき台では、病院で精子提供を受けられるのは結婚した夫婦のみが前提とされており、検討事項として「特定生殖補助医療の提供を受けることができる者の範囲は、法律の公布後5年を目途として検討」とある。精子提供を認める以上、誰でも治療を受けられるようにしなければ、生まれてくる子どもたちの人生にまで影響が及んでしまうのではないか。

誰が子どもをもつにせよ、生まれてくる子どもの福祉は最優先であってほしい。法案をめぐる今後の議論に注目していきたい。

大塚 玲子(おおつか・れいこ)
ノンフィクションライター、編集者

1971 年生まれ。東京女子大学文理学部社会学科卒業。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材、執筆。著書は『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。東洋経済オンラインで「おとなたちには、わからない。」、「月刊 教職研修」で「学校と保護者のこれからを探す旅」を連載。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。