この20年で母子世帯に占める“未婚の母”の割合が約2倍になった。海外の精子バンクを利用して結婚をせずに子を持つ選択をする女性も増えている。ライターの大塚玲子さんが世界最大の精子バンク、クリオス・インターナショナルの日本での利用状況を取材した――。
20代の妊婦がマグカップで飲み物を飲んでいる。
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精子バンクという選択肢

結婚をせずに子どもをもつなんてちょっと……、と思う人もいるかもしれない。

だが「もしそれが可能なら、そうしたい」と思っている女性は少なくないだろう。筆者も若い頃、「結婚はどっちでもいいけれど、子どもは欲しい」とよく口にしていた。現実には未婚で子どもをもつ度胸も甲斐性もなく型通りに結婚して出産をしたが、早々に離婚することとなり、結果的には選択的シングルマザーとそれほど違いはなかった。

最近は日本でも、海外の精子バンクを利用して子どもをもつ人が増えている。国内では、日本産科婦人科学会の方針により、結婚している夫婦しか医療機関で精子提供を受けられないとされている。そのためネットで個人の精子提供ボランティアを探す人もいるが、感染症のリスクなどもあるため、精子バンクという選択肢が浮上してくる。

自らの選択でシングルマザーになるのは、どんな人たちなのだろうか。世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」(本社デンマーク)の日本窓口を担う、伊藤ひろみさんに話を聞かせてもらった。先行するヨーロッパの状況から、日本社会がこれから進むべき方向は見えてくるだろうか。

利用者の約半数がシングル

クリオスでは、日本の窓口が開設された2019年2月から今日まで、国内で500人を超える女性が精子提供を受けた。このうち約半数が独身女性、つまり選択的シングルマザーだ。

ヨーロッパのクリオス利用者も同様に、約5割がシングル女性だという。残りの利用者は、日本では婚姻している夫婦が3~4割、同性カップルが1~2割だが、ヨーロッパではこの比率が逆転し、同性カップルのほうが多くなる。

「日本で窓口を始めた当初、シングルの方からのお問い合わせは毎月10名前後でしたが、いまは30名前後となっています。ただし婚姻している夫婦や、同性カップルのお問い合わせも同様に増えています」(伊藤さん、以下同)

利用者はどんな人たちなのか。ヨーロッパでは総じて、高学歴・高年収のいわゆるキャリア女性が多いが、日本ではあまりそうした傾向は見られない。年収も学歴も、幅広い層のシングル女性から問い合わせがあるという。