昭和型「お嫁さん」輩出構造
今では信じられないことですが、昭和の女性たちは、「お嫁さん」になることが、人生の基本でした。教育と産業が歩調をそろえ、「女性をお嫁さんに誘う」よどみない系がつくられていたため、多くの女性たちは、それに抗うことなどできません。
ところが、堅固に維持されたこの社会構造が、1990年代にあっけなく壊れていきます。そのきっかけになったのが、バブル崩壊です。
1946年の新憲法で男女平等が謳われたにもかかわらず、性別役割分担が幅を利かせ、「女は家に」という考え方が生き延び続けた理由は、「経済成長が順調で、労働者への分配が多かった」ことと「基礎人口が多く、労働希望者が過多だった」ことにあるでしょう。好況が続けば、企業は社員の給与を上げます。同時に、課長や部長などの役職者ポストも奮発します。当然、労働者は勤続に応じて給与も役職も上がるため、容易に家族を扶養することができる。だから、「夫が働けば妻は家にいられる」状態となりました。
そして、年間出生数が200万人を超えるような多産世代が続いたため、その半分の男性しか働かない状態でも、労働供給は十分でした。
この二つが結びつくことで、俗にいう日本型雇用はどんどん強化されていくことになります。
バブル崩壊とともに、昭和型社会構造が崩れていく
まず、会社は成長し続けるので、リストラをする必要はありません。労働者は黙って働き続ければ、給与も役職も上がります。当然、転職を志向する人は減っていく。働く人が男に偏れば(=女性が働かず不労人口が多いため)、経営環境によっては人員不足も起きるでしょうが、それは、残業や休日出勤で何とかする。短い不況期には、そうした残業や休日出勤を控えることで、人件費は抑えられる……。こうして、男は家族を顧みず長時間労働をし、その代わり、企業は多重に雇用を保証し、さらに妻は家で子育てをする、という昭和型社会構造がつくり上げられていくわけです。
ところが、平成になり、経済風景が一変することになります。バブルが崩壊し、会社は成長し続けるという神話が途切れました。これが、昭和型社会構造への最初の一撃となります。