日本とイタリアは2つの点で似ている

イタリアと聞くと「陽気な人が多そう」「おしゃれ」「情熱的」というイメージがあるかと思いますが、実は日本と似ているところがあります。

まず、保守的な性別役割分業意識です。ヨーロッパの中でもイタリアは比較的「男性=仕事、女性=家事・育児」という意識が残っています(*1)。ヨーロッパ諸国は日本よりも男女平等が進んでいるのですが、その中でもイタリアはやや日本に似て、男女の役割に保守的な考えを持っています。このためなのか、日本と同じく、出産には結婚が前提となっているケースが多く、出産の約7割が結婚した夫婦によってなされています(*2)

次に低い出生率も日本と似ています。図表1は、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した、合計特殊出生率と言われる指標を示しています。この指標は、一人の女性が一生の間に産む子どもの数を示しており、国際比較の際にも使用されます。これを見ると、日本とイタリアは水準が近く、両国とも低出生率になっていることがわかります。特に2013年以降だとイタリアの出生率の方が日本よりも低くなっており、少子化が進展しています。

【図表】イタリアと日本の合計特殊出生率

このように日本とイタリアは、性別役割分業意識が残っており、少子化が進んでいるという点で類似性があります。このイタリアでニュースが出生行動にどのような影響を及ぼしたのかという点は、日本にも参考になるはずです。

テレビの経済ニュースの影響を検証

イタリアにおけるニュースと妊娠確率の関係を検証したのは、フィレンツェ大学のラファエレ・ゲットー准教授らの研究です(*3)。この研究では各月のテレビニュースにおける経済に関する報道の数をプラス、マイナス、不明の3つのグループに分類し、それらが妊娠確率に及ぼす影響を検証しました。

コロナウイルスの影響下という事由の解雇予告通知書
写真=iStock.com/takasuu
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ニュースの分け方ですが、例えば「失業率が低下」と報道された場合、プラスの報道が1件と分類します。これに対して、「女性失業率が前月と比較して上昇」と報道された場合、マイナスの報道とカウントされます。これ以外で「年金制度が改正された」といったプラスともマイナスともとれない報道の場合、不明と分類します。これら各月のプラス、マイナス、不明の経済に関する報道の数が各月の女性の妊娠確率に及ぼす影響を分析するわけです。