プラスの経済ニュースが多いほど妊娠確率は上昇
分析に使用したのは、合計で約64万のイタリア人女性のサンプルです。年齢は15~40歳であり、ちょうど出産が多い時期に限定しています。なお、分析では年齢、雇用形態、学歴、配偶関係だけでなく、各月の物価変動や4半期ごとの失業率の影響を統計的手法によって除去しています。
ちなみに、ニュースはイタリアの公共放送のRai1のニュース番組「TG1」からデータを取得しています。TG1は毎日約700万人が視聴しており、その影響力は大きいと言えるでしょう。
実際の分析の結果、好景気を示すプラスのニュースが多いほど、各月の妊娠確率が増加することがわかりました。逆に不景気を示すマイナスのニュースが多いほど、各月の妊娠確率が低下していたのです。データの各月の平均妊娠割合は0.46%だったのですが、ニュースによってその値が大きく変化しました。
プラスのニュースの影響が大きい
推計値を用いたシミュレーション分析の結果、もし各月のプラスのニュースが5件増えた場合、月の平均妊娠確率が約9.95%上昇することがわかりました。これに対して、各月のマイナスのニュースが5件増えた場合、妊娠確率が約5.97%低下したのです(*4)。この結果が示すように、プラスのニュースの方が妊娠に及ぼす影響が強い傾向にあります。
人々の行動がニュースのトーンによって影響を受けるというのは、非常に興味深い結果です。これは人々がニュースの内容を信頼し、その情報を基に行動を変えることを示唆しています。
また、イタリア人は依然としてテレビが主な情報源だという点も今回の結果に影響しているかもしれません。イタリアで実施された2016年の調査によれば、約7割の人が日々の情報のアップデートにテレビを活用し、それに付属してネットの情報を利用する傾向にありました(*5)。