年収の増加とともに幸福度が伸び続けることが判明

カーネマン名誉教授とディートン教授の研究から13年後の2023年、カーネマン名誉教授はペンシルベニア大学ウォートンスクールのマシュー・キリングスワース上級研究員とペンシルベニア大学のバーバラ・メラーズ教授とともに、新たな研究を発表しました(*2)。ちなみに使用したデータは3万3391人の働く米国居住者を対象としたものです。

プリンストン大学 ダニエル・カーネマン名誉教授
プリンストン大学 ダニエル・カーネマン名誉教授(写真=nrkbeta/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

この研究でも年収と幸福度の関係に注目しているのですが、以前とは違った結論となりました。

その結論を端的に言えば、「年収が7.5万ドル以上になっても、幸福度は伸び続ける」というものです。

幸福度が低いグループでは「幸福度の頭打ち現象」があるが…

より正確には、幸福度が低いグループと幸福度が高いグループに分けて分析した結果、幸福度が低いグループの人々では、年収と幸福度の関係がある一定で頭打ちになるが、幸福度が高いグループの人々では、年収の増加とともに幸福度の上昇傾向がさらに強まる、という結果でした。幸福度が高いグループでは、年収が10万ドル(約1300万円)以上になると幸福度の伸びが増強されており、非常に興味深い結果となっています。

2023年の研究では、幸福度が低いグループと幸福度が高いグループに分けて分析しており、これが新しい結論に至る理由となりました。

実は近年、幸福度が低いグループと高いグループでは、学歴、健康、就業状態といったさまざまな要因の影響が異なってくることが徐々に明らかにされています。例えば、バード大学ベルリン校のマーティン・バインダー教授らの研究では、幸福度の高いグループほど学歴や健康の影響が小さく、仮に失業しても幸福度の低下が小さいことがわかっています(*3 *4)

カーネマン名誉教授らの研究もこの新しい流れの1つだと言えるでしょう。

いずれにしても、最新の研究結果では、「お金持ちほど幸せになれる」ことを意味します。この結果は何を示唆するのでしょうか。