AIが当たり前の世界を生きるこれからの子どもたち

今、ChatGPTが使えるということは、小学生が大人になる10年後は、もっとすごい技術が生まれていることは間違いないだろう。毎日のようにChatGPTの技術を使った新しい技術が生まれている。ChatGPT自体の精度もどんどん向上している。GPT-4が出たと思ったら、もうすぐGPT-5が出るそうだ。

私も、毎日音声入力でChatGPTを使っているが、まるで会話しているみたいである。画面に人の画像をつけるだけで、ロボットと話している感覚になる。

絵も文字入力で描ける時代。既存の入試問題のようなテストは、写真に撮れば答えが出る時代がもうそこまで来ているだろう。

予測不可能な時代だからこそ大人も子どもに教わる

だからこそ大切なことは「没頭力」であり、没頭できる環境を学校で用意することである。

教師の常識にとらわれず、よく見て、子供から学ぶ。共に成長しようという気持ちで前を歩くのではなく、横に伴走する。そんな授業が必要になってくるのではないだろうか。

そして、その没頭した子供を見て、面白がる力も我々、大人がもつ必要があるだろう。「そんなことをしても何の意味もない」。よく聞くことだが、ほんとうにそうなのだろうか?

これからの時代は誰も予測できない。今日の正解が明日の不正解になる時代である。子供だけでなく大人が一緒に学び続ける。それさえできれば、ChatGPTのような技術を規制するのでなく、使いながら子供も大人も共に成長することができるだろう。

いつまでも大人の常識が正しいという概念を捨てなくてはならない。デジタルネイティブの子供の考えこそ、正解があると思って話を聞くべきだ。教師は「教える師」と書くが、これからの時代は子供から教わるプロになることが、新しい教育において必要な力ではないかと私は思う。

庄子 寛之(しょうじ・ひろゆき)
ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター 研究員

大学院で臨床心理学科を修了。道徳教育や人を動かす心理を専門とし、東京都内の公立小学校に約20年勤務し、「先生の先生」として全国各地で講演も行った。学級担任として接した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。2023年度よりベネッセ教育総合研究所に所属。『子供が伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための叱らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『オンライン学級あそび』(学陽書房)など著書多数。