「パパより稼いでる」はNG

一般的に家庭内ではパパのほうが稼ぎ手で、ママは家事をやる人だというイメージが社会的に浸透しているため、「ママは一家の大黒柱ではない」というイメージを子どもが持っていることもあります。

読者の場合、二馬力で夫と同等またはそれ以上の収入を得ているケースも多いでしょう。その場合、「ママはパパより稼いでいるのよ!」と言えば、子どもは「パパはママよりも身分が下」と思ってしまいます。

こうしたとき、子どもに伝えたいのは収入の多い、少ないだけで仕事や人間の価値は決まらないということです。

仮にママの方がたくさん稼いでいたとしても、ママは家事が苦手かもしれません。その分、パパが家事をカバーして家庭生活が円滑になっているかもしれません。

人間は、得意なこと、不得意なことがあります。収入が高い場合は特にここを意識しないと、子どもが職業を選択する際に、収入だけを意識して選んでしまうことになったり、収入で人間の価値を測ってしまったりすることになるので注意が必要です。

「ママ、1000万円稼いでる?」と聞かれたら

分かりやすい数字だからか、「親の年収は1000万円を超えているかいないか」を知りたがる子どももいます。具体的な数字を聞かれてはいなくとも、実際に超えている場合や近い数字の場合、そのまま答えていいものかは悩みどころです。

というのも、「年収1000万円」というのは子どもにとってはある種の「お金持ち」のボーダーラインだからです。「年収1000万円世帯だから自分はお金持ちだ」と認識してしまうと、他人を見下したり、浪費などの良くない行動を招いてしまうかもしれません。

実際のところ、子どものいる年収1000万円世帯は、「お金持ち」と言えるかは微妙です。特に都心部では、日常生活にかかるお金全般が高いことに加えて、住宅費、教育費にもお金がかかるので、実際のところ家計に余裕がないというご家庭は少なくありません。

そこで、子どもに、年収が高くてもその分、生活コストが高いので、そんなに余裕があるわけではないといったことを話してみるのも良いでしょう。都心部であれば、塾に行っている子どもも多いと思うので、塾代などの例から話してみると、子どもも実感できるかもしれません。

大事なのは「年収にフォーカスしないこと」

子どもに年収を聞かれた場合、親としてはとても答えづらいものですね。ただし、平均年収を伝える、業界や職種による年収を親子で一緒に調べてみるだけでも、大人がどれくらい稼いでいるのかという知識を得たり、あるいは将来職業選択を考える上で参考になるなどの学びにつながるでしょう。

また、特に年収が高い場合には、年収だけにフォーカスして話をすると、子どもが仕事や人間の価値を誤って判断してしまう可能性が高くなります。

いろんな仕事を調べてみて、年収と共に、それぞれの仕事の役割についても話してみると、より効果的でしょう。

頼藤 太希、高山 一恵『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)
頼藤 太希、高山 一恵『11歳から親子で考えるお金の教科書』(日経BP)

日本では、家族の間でも、お金のことを話すのは気が引ける、はしたないという意識が強いように思います。けれど、子どもは好奇心旺盛。日々の生活の中で、さまざまなお金の話を見聞きしては、たくさんの疑問を持っています。

そこで、「食べ放題のお店はなぜ潰れないの?」「お金持ちになるにはどうしたらいいの?」など、25個のトピックを本にまとめました。

FP夫婦と息子の3人家族の会話形式でまとめています。子どもと一緒にお金について学びたいという方、ぜひ、お手にとっていただけるとうれしいです。

高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士

慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。