後援会なし、土日は家庭最優先で活動し当選した市議も
近年、女性議員は徐々に増えつつあり、従来の選挙活動とは違ったやりかたで当選する人も出始めています。例えば2020年のつくば市議選では、小さな子ども2人を子育て中の川久保皆実さんが無所属新人として立候補し、後援会も辻立ちも選挙カーもなし、土日は子どもとの時間を最優先にするといった選挙活動で当選を果たしました(※)。
※「後援会も辻立ちもなし」無名の34歳女性が3位当選を果たした、斬新すぎる選挙戦略」
今は新しい選挙文化への過渡期であり、この文化が根付けば女性候補者のチャンスは大きく広がっていくでしょう。地域回り以外の、政策発信の場も広がりつつあります。今はSNSもありますし、候補者アンケートの結果を基に有権者が政策キーワードで候補者を絞っていけるサイトもあります。
従来は、有権者と候補者の接点と言えば「抽象的な政策論争か握手」と、極端にかけ離れた2つしかありませんでした。これでは、有権者が候補者を知ることのできる場が少なすぎます。
投票先は、地域への思いやライフストーリーを含めた「人となり」と、当選したら皆の生活をこう変えますよという「政策」の2点を重視して選びたいもの。どういう政治信念を持っているかを見極めるためには、議員の議会での言動を市民がチェックするようなアクションが広がってほしいと思います。
具体性のない政策論争はやめ、暮らしに直結する選挙を
地方議員は地域の住民の要求にきめ細かく対応をしています。ただ、男性の方が議員とのつながりが多く、女性たちの声は同じように届いていないのが現状です。声さえ届けばほとんどの議員は動いてくれます。それこそが自分の仕事だと思っていますし、実際に住民の暮らしを変える力があるからです。
しかし、そうした議員たちも、そもそも有権者の支持がなければ議員にはなれません。つまり、政治や暮らしを変える本当の力は有権者にあるのです。その力に気づいてほしいと思います。推しの政治家を支えつつも自分たちの意見を届ける。そうした行動を有権者が取ることで、力を発揮することができるのです。
ジェンダー平等で多様性のある政治を実現するには、「ケアなし男性」が圧倒的に有利で男性仕様のままの選挙文化も、女性候補者がハラスメントに遭う現状も変えていかなければいけません。有権者が力を発揮し、新しい選挙文化をつくっていくことを願っています。
専攻は現代日本政治論、ジェンダーと政治。1967年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。カリフォルニア大学バークレー校大学院修了。政治学の博士号を取得。2021年、フランス政府より国家功労勲章シュバリエ受章。著書に『私たちの声を議会へ 代表制民主主義の再生』(岩波書店)、編書に『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』(朝日新聞出版)などがある