現状の選挙は家族の「ケアなし」で活動できる人が有利
もちろん、直接会ってみて印象が良かったから票を入れるというのは悪いことではありません。でも、候補者が個人で地域回りをするには膨大な時間がかかります。特に女性の場合は家事や育児を負担していることが多いため、夜に行われる会合などには出席しにくいという現状があります。
選挙戦をゲームと見なし、勝つことだけを考えるのなら「ケアなし」が絶対的に有利でしょう。しかし、議会がケアなし男女だけで占められているようでは政治がゆがんでしまいます。多様な人々の生活に役立つ政策とは、家事育児をしている男女が、今の生活を続けながら参画できて初めて実現できるものだと思います。私たちがめざすべきはそうした社会ではないでしょうか。
家事育児負担が女性に偏っている現状、ワークライフバランスを無視した選挙活動のありかた、政策で競えない選挙文化。女性も出やすい選挙を実現するには、これらを改善し、かつ有権者も候補者を政策で選ぶ意識を持つ必要があると思います。
選挙カーから子どもが手を振ったら公職選挙法違反に?
2つ目は、選挙活動の場も当選後の職場となる議場も、さまざまなところが男性仕様のままであるということです。例えば、子連れでの選挙活動は公職選挙法違反になる可能性があり、子どもの預け先が確保できない場合に候補者はとても困ることになります。「こそだて選挙ハック!プロジェクト」などの働きかけがあり、総務省も3月には通知を出し、ルールを明らかにしています。子どもが単に親に同行しているのは問題ないのですが、子どもが選挙運動用の車に乗って有権者に向かって手を振ったら、法律に抵触するおそれがあるとのことです。
道ゆく有権者に手を振られたら振り返す子もいるでしょう。問題は、違法かどうかの判定が曖昧なために、子連れで選挙活動せざるを得ない候補者は、ことあるごとに「これはOKなのか違反なのか」と悩み、萎縮してしまいます。対立陣営がつけいる隙を与えることにもなりかねません。そもそも、未成年の選挙運動を禁止すべきなのか、子どもの政治権利の観点から見直しを含めて、議論が必要でしょう。
年齢的に一人で家に置いてはおけないけれど、パートナーや両親に頼れない、預け先がない、ベビーシッター代を出すのが厳しいなど、人によってさまざまな理由があるはずです。政党によってはベビーシッター利用料を補助する仕組みもありますが、無所属の人はこれも利用できません。