両親は就職氷河期世代

女子学生の言葉ににじみ出ているのは将来に対する「不安と危機感」である。不安や危機感は生育歴も影響している。2000年以降に生まれた世代の両親は就職氷河期世代やロスジェネ世代でもある。就職できてもリストラや企業再編による左遷など組織の不条理な扱いに辛酸をなめた人もいるだろうし、今の新入社員はそんな親の背中を見つめ続けてきた世代でもある。

2008年、8歳の時にリーマンショックが発生し、翌年には派遣切りによる「年越し派遣村」もテレビで放映された。15歳の多感な時期には、高橋まつりさんの自死による電通事件が大きく報道され、若者に「ブラック企業」への恐怖心を植え付けた。また、大学生時代にコロナ禍に遭遇し、大学からも閉め出され、講義はオンラインに切り替わった。人とリアルで接する機会が極端に減り、コロナ禍による非正規切りの横行、そしてロシアのウクライナ侵攻も始まった。感受性の強い年齢だけに将来に対する不安や危機感を抱いたとしても不思議ではない。

「安定した生活を送りたい」というささやかな希望

ラーニングエージェンシーが実施した「働くことに関する新入社員意識調査レポート」(2023年4月19日)によると、「仕事を通じて成し遂げたいこと」の質問で最も多かったのは「安定した生活を送りたい」であり、65.8%だった(複数回答)。この割合は過去最大であり、2019年以降、4年連続で増加している。2番目に多かったのは「自分を成長させたい」で、57.8%。こちらは2020年までは増加傾向にあったが、その後は減少し続けている。

安定した生活といっても大金を稼ぎたいわけではない。「大金を稼ぎたい」と回答した人は20.8%にすぎない。人並みの生活ができる程度の収入を安定的に得たいというささやかな希望である。