まだまだある朝食のメリット

⑤ 朝食が睡眠中に脂肪を燃えやすくする

私たちは日中は、糖質(ブドウ糖)をエネルギー源にしていますが、睡眠中は体内にたくわえられた脂肪を材料にしてエネルギーを作ります。

柴田重信『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)
柴田重信『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)

日中の活動期と、夜間の休息期では代謝の方法が大きく変わるのです。

寝ているあいだに行われる脂肪を酸化して分解する脂肪酸化というものを起こしやすくするのも、朝食です。

朝食、昼食、夕食、夜食をそれぞれ午前8時、昼12時40分、午後5時45分、夜10時に設定し、1回目は朝食、昼食、夕食をとり夜食はとらずに、2回目は朝食をとらずに昼食、夕食、夜食をとって、どちらがエネルギーを消費しているかを比べました。

すると、朝食をとらない人たちは、睡眠中あまり脂肪が分解されず、夜食でとった糖質(ブドウ糖)が先にエネルギーとして使われていました。朝食抜きで夜食ありの習慣は、太りやすいということです。

⑥ セカンドミール効果が大きい

野菜やきのこ、海藻、豆、芋などに豊富に含まれる食物繊維は食後、血糖値を上げすぎないようにする作用があります。その効果は、どの食事でも現れますが、血糖値を下げる効果が高いのは朝食に食物繊維をとったときです。

朝食の食物繊維が血糖値を下げる効果は、昼食や夕食にも及びます。昼食や夕食で食物繊維をとらなくても、朝食での効果が持続するのです。最初の食事(ファーストミール)でとったものの効果が、次の食事(セカンドミール)にも影響を及ぼすことをセカンドミール効果といい、朝食のセカンドミール効果は一日のなかで最も大きいことも確認されています。

⑦ 血圧を下げるから脳卒中も減少

一般に血圧は朝上がり、夜になると下がります。朝、血圧が上がるのは、活動を高めるための体の作用ですが、朝食をとると血圧は下がります。しかし、朝食をとらないと空腹によるストレスも加わって、血圧はより高くなりがちです。日常的に朝食をとらない人は高血圧になりやすい傾向があるということです。

最近、メタボの人がなりやすい心臓病や脳卒中と、朝食の関係に関する調査が発表されました。45~74歳の男女約8万人を13年間追跡した結果、朝食を毎日とる人に比べて、週に0~2回しかとらない人は、脳卒中全体では18%、脳出血に絞ると36%もなりやすいことがわかったのです。

高血圧は、脳卒中を起こす原因のひとつなので、きちんと朝食をとり、運動や薬などで血圧をコントロールしていくことが重要になります。

血圧測定中
写真=iStock.com/Casanowe
※写真はイメージです

このようなことから、朝食にはほかの食事では得られない効果があることがわかります。

これらの効果は、いずれも肥満やメタボを防ぎ、改善するうれしいものばかりです。

柴田 重信(しばた・しげのぶ)
広島大学医科学研究科特任教授、日本時間栄養学会(理事、顧問)

1953年生まれ。76年九州大学薬学部薬学科卒業。81年九州大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。早稲田大学人間科学部教授などを経て、2023年まで同大理工学術院先進理工学部電気・情報生命工学科教授を務めたのち、現在、同大名誉教授、広島大学医系科学研究科特任教授、日本時間栄養学会理事・顧問などを兼任。監修書『食べる時間を変えれば健康になる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著書『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法 時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康』(杏林書院)、著書に『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』、『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)ほかがある。