シングルマザーとなるかもしれない状況で、もっとも女性を不安にさせるのが「住まい」の問題だ。そんな女性のために始まったシングルマザーのシェアハウスが神奈川・伊勢原にある。運営するめぐみ不動産コンサルティングの竹田恵子さんは「安っぽい空間で惨めな思いをさせたくない」と話す――。

シングルマザーのシェアハウス

ここが、始まりの場所だった――。閑静な住宅街の一角、ベージュのタイルの外壁が高級感を醸す、重厚な造りの邸宅。この豪邸と言ってもいい一戸建てが、めぐみ不動産コンサルティングが手がける、シングルマザーのシェアハウスだ。神奈川県伊勢原市。大山詣での玄関口であり、魚屋、八百屋、肉屋など個人商店が健在な小都市で今、シングルマザー、障がい者、高齢者、子どもなど社会的弱者とされる存在に寄り添い、地域として支え合っていける循環型のシステムが構築されようとしている。

地域社会における、新たな支え合いのロールモデル作りの先頭を走るのが、めぐみ不動産コンサルティング社長の竹田恵子さん(47歳)だ。中肉中背、丸顔いっぱいに笑顔を浮かべ話しかける姿は、伊勢原のまさに“お母さん”。分け隔てなく、何でも笑って受け止めてくれる豪快さに、頼られたら採算度外視で「任せて!」と言うんだろうなーという人柄がにじむ。

シェアハウスに近づいていくと、漠然と抱いていたシェアハウスのイメージが、驚きとともに心地よく覆されていく。

シングルマザーのシェアハウス
撮影=プレジデントオンライン編集部

8世帯が集う大きな一軒家

恵子さんがナンバーキーで鍵を開けると、重厚な雰囲気の立派な玄関に迎えられた。8世帯それぞれの下駄箱も十分な広さだ。格調高い和風建築で、造りもしっかりしている。玄関入ってすぐの8畳の多目的スペースには、幼児のおもちゃが整頓されて並んでいる。「子どもたちは結構、この畳の部屋で遊んでいますね」と恵子さん。今は、幼児が数人暮らしている。ここは子ども同士の育ち合いの場でもあるのだ。

一軒に8家族が住めるのだから、どれだけの豪邸かがよくわかる。2階建てで、個室が全8室あることに加え、共用のキッチンとお風呂2カ所ずつ、洗面所とトイレが3カ所ずつ存在する。広々とした共用スペースも2カ所。家の中はどこも、ピカピカと清潔だ。それぞれの生活空間となる個室は狭くて4畳半、広い部屋は8畳もある。

それぞれの部屋に鍵がつき、収納スペースも十分だ。個室は日当たりのいい出窓があり、天井も高く、アパートの安っぽさと対極を成す、ゆったりと落ち着ける雰囲気。かばん一つで駆け込んできたシングルマザーと幼い子どもを、ここで一息ついていいんだよと、包み込んでくれるような空間だ。安心して、羽を休めていいんだと。

これこそ、この家を選んだ恵子さんの思いやりであり、優しさだ。安っぽい空間で惨めな思いをさせたくないのだという。