年収交渉は「営業活動」と捉える

「どのような戦略で希望年収を勝ち取るか」という交渉内容は、事前に自分でしっかりと考え、作り込んでおいてください。これは「営業活動」なので、準備をしっかりしておかないと、あっさり商談に負けてしまいます。

転職エージェントが年収交渉をしてくれる、という話もたまに聞きますが、ほぼ期待できないと考えておいていいです。黙っていたら、向こうの「言い値」で簡単に買い叩かれてしまいます。年収にこだわりたいのであれば、自分から強い姿勢で交渉しましょう。

GREAT! 回答
ベース年収で500万円以上、手当やボーナスを含めた総額年収で600万円以上を希望します。現職年収は住宅補助、来年度の昇給見込みなども含めると560万円程度で、それに少し上乗せして600万円以上が希望です。それに見合う貢献は可能だと考えております。現在、他社の面接も同時に受けておりますので、複数の内定をいただいた際には、比較検討をさせていただきます。
GREATポイント! 現職より高い年収を狙う

重要なのは、「現職年収と同等を希望」ではなく、現職よりも高い年収を果敢に狙っていくことです。本書の面接テクニックをすべて実践して高い評価を獲得し、「他社に奪われたくない貴重な人材だ」と企業から本気で思ってもらえれば、高年収オファーを勝ち取ることは現実的に可能です。ここで遠慮してはいけません。

また、交渉テクニックとして、競合他社の面接も同時に受け、「他社と比較して入社する企業を決めます」と言っておいて、企業側に「希望年収に沿わない場合、入社してもらえなくなるのでは……」と思わせる心理戦を仕掛けるのも、一つの有効な手段です。

面接を制すれば、転職で年収は上がる

求職者の中には、「転職で年収が下がるのは仕方がない」などという勘違いをしている人もいます。その考え方は、非常にもったいないです。

安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』(ソーテック社)
安斎響市『すごい面接の技術 転職活動で「選ばれる人」になる唯一の方法』(ソーテック社)

厚生労働省の2020年の調査によれば、直近で転職を経験した人のうち、年収が「増加した」人が39.0%、年収が「減少した」人が40.1%、「変わらない」という人が20.2%という結果でした。転職後に年収が上がる人・下がる人の割合はほぼ同等で、「年収を上げる転職」は、決して高望みというわけではないのです。

一定年数の社会人経験を積み、しっかりと自分の経験・スキルを面接の場で売り込むことができれば、あなたの年収は上がります。転職が当たり前の世の中になってきているからこそ、転職活動とは、やり方次第では収入を大幅に上げるためのチャンスになり得ます。

企業によっては、最終面接が終わるまで希望年収を一度も聞いてこない場合もありますが、条件交渉は早め早めに議題に挙げておいた方が良いです。自分の価値を安売りすることなく、より高い年収を得るための交渉を、自分から仕掛けましょう。

安斎 響市(あんざい・きょういち)
転職ライター

1987年生まれ。日系大手メーカー海外営業部、外資系メーカーなどを経て、2020年より外資系大手IT企業のシニアマネージャー。「転職とキャリア」をテーマに、ブログ、Twitterなどで情報発信を続け、日経BP『日経トレンディ』、東洋経済新報社「東洋経済オンライン」、マネーフォワード「MONEY PLUS」など、多くのメディアで取り上げられている。著書に『私にも転職って、できますか?~はじめての転職活動のときに知りたかった本音の話~』(ソーテック社)、『転職の最終兵器 未来を変える転職のための21のヒント』(かんき出版)などがある。