リーマンショックも10年経てば…
図表1をご覧ください。リーマンショックが起きたのは2008年の10月ですが、仮にその1カ月前、2008年の9月から毎月3万円ずつ、世界株式全体を表す指数に積立投資を続けて10年間経った場合の成果をあらわしています。08年9月から積み立てを始めるということはスタートしていきなり大暴落を経験し、さらにそこから半年間にわたって下げ続けるという非常に不運なタイミングで始めているケースです。
ところが、それでも10年間にわたって何も売買をせず、ただ積み立てで購入を続けた場合、積立総額360万円に対して10年後の2018年8月末時点での評価額は約748万円ですから2倍以上、年利回りにすると14.5%になっているのです。
投資をするうえで非常に大切なたった一つのこと
これは積立投資の例ですが、3年前のコロナショックの時も同様です。2020年1月17日に日経平均は2万4041円でしたが、新型コロナウイルスの拡大不安によってその2カ月後の3月19日には1万6552円と31%も下落しています。ところがそこで慌てて売らずに何もせず放っておけば、半年後の9月10日には3万381円と、下がったところから半年で84%も上昇しています。
そしてこれは米国でも同様です。同じ2020年2月14日に米国の代表的な株価指数のS&P500は3380ポイントでしたが、その1カ月後にはこれもコロナ拡大による不安心理で2304ポイントと日本同様32%下落しています。ところがそこが底値となり9カ月後、その年の年末には3756ポイントまで上昇しています。すなわち暴落時に何もしないことが正解だったのです。これは2020年3月23日付の本連載「5回の暴落を経験した経済評論家が伝授『今、投資で絶対やってはいけないこと2つ』」でも私が指摘した通りのことです。
このように考えると、非常に大切なことが一つ浮かび上がってきます。それは「暴落した時に慌てて売らない」ということです。株式市場というものは短期的には上げ下げを繰り返しますが、それを当て続けることはほぼ不可能です。ところが長期的に見れば資本主義が続く限り、経済というものは自己増殖するシステムです。だからこそ目先の上げ下げに惑わされず、長期の構えでいることが大事なのです。
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。