年金だけで暮らす世帯が約半数

もし貯金がゼロだというのなら、受け取る年金の範囲内で生活すればいいだけの話です。現に65歳以上の夫婦世帯では、年金による収入が、収入の8割以上を占める世帯は、6割近くあります(図表1)。じつは、毎年の調査では、年金だけで収入の100%を占める世帯は半数ぐらいはあるのですが、この図の調査は2020年に実施されたものなので、コロナ禍による特別定額給付金が入ったために、年金収入の割合は少し減っているのです。とはいえそれでも、その多くは年金収入のみで生活をしているのです。

年金だけで夫婦2人暮らしをやっていけるか実験した結果

私は現在71歳ですが、65歳から受け取れる公的年金は、70歳になるまで一銭も受け取ってきませんでした。ですが、実際に公的年金だけでも生活できるということを、自分自身で証明してやろうと思い、ある社会実験を行ないました。

どうしたかというと、私は自分が経営する会社から、自分の給料をもらうようにしています。つまり自分で自分に給料を払っているわけですが、その金額を月額24万円に設定したのです。これは、「もし自分が年金を受け取っていたとしたら」という金額が、およそ23万円ぐらいだったので、その金額に合わせたわけですが、夫婦2人でまったく問題なく、赤字にもならずにこれまでずっと生活できています。したがって、誰もが「2000万円足りない」というわけではないのです。

にもかかわらず、なぜか「2000万円問題」が炎上してしまったというのも、そこに、ある種のナラティブといえる「老後不安」があったからでしょう。