猫は育児放棄することも

逆に、猫はと言うと、育児放棄(ネグレクト)に近い行動を見せることがあるのだそうだ。

「子どもに先天的な病気があると、母猫はその子を育てようとしないんです。疾患がある仔猫は身体が弱く、お乳を吸う力も弱い。口内の温度も低いんですね。猫は冷たい口でお乳を吸われるのが嫌いらしく、口の冷たい子にお乳を与えようとせず、はじこうとします。もともと身体が弱いのに、お乳をもらえなければますます衰弱していく。残念ですが、その子は育ちません」

生きる力の弱い動物は、そうやって淘汰されていく。それも動物界の摂理なのだろうと小暮は言う。ならば、人間はどうか――?

わが子を愛おしむ親の愛はクリニックに子どもを連れてやってきた猿や猫、ユキヒョウと変わることがないと思っているが、ときおり、虐待でわが子を死に至らしめる親たちの愚行が誌面を賑わせる。

5歳の息子を餓死させた母親に懲役5年

福岡県篠栗ささぐり町では、5歳の息子を重度の低栄養状態で餓死させた母親がいた。この母親は、いわゆる“ママ友”による洗脳状態にあり、離婚を強要されたばかりでなく生活保護費まで奪い取られていたというから同情の余地はあるが、子どもの死亡時の体重はわずか10キロほどというひどい状態だった。5歳児の平均体重の、およそ半分である。ママ友のマインドコントロール下にあったとはいえ、この飽食の時代に餓死するまで、母親はわが子に食事を与えなかった。

アメリカでもヴィーガンの両親が1歳半になる子どもに乳製品すら与えようとせず、栄養失調で死なせるという事件が起きていた。父親は判決を待っている状態だが、母親にはすでに終身刑が言い渡されている。5歳児を餓死させた母親には懲役5年の実刑判決がくだされ、母親をマインドコントロールしていたママ友には実刑15年の刑がくだされている。懲役5年と終身刑――、どちらも子どもを死なせたことに違いはないが、日米の命の尊さの違いをまざまざと見せつけられたような気がする。