実績、上司の推薦、将来性
① これまでの実績
事実は強いということでしょう。とくに勝ち上がり型人材プールでは実績偏重になりすぎないように、将来性の評価をどう織り込むかが課題です。「優れた実績」を前提条件にするかどうかは議論が分かれています。
ポテンシャル×パフォーマンスの4象限で考えた場合、ポテンシャルはあるがパフォーマンスが今ひとつの人材は、救えない感がある(金融業人事部)
若手のプール人材はトップ1%ほどの圧倒的実績の者が多いが、中にはそれ以外の者もおり、人事ヒアリングなどでの定性情報をもとにピックアップしている(情報通信業人事部)
② 上司の推薦
上司の推薦は、会社が部門判断をどの程度尊重するかという指標でもあります。ここで言う上司とは、たいていは各部門の担当役員です。推薦は将来性の観点もふまえた審査になり得るものですが、推薦者個人の思惑が強く反映されます。また、各部門のサクセッションプラン(ポジションとの紐付きが強い後継者計画)的な色彩が強くなります。各部門権限が強い会社は、推薦を重視するかたちになりがちです。
事業責任者が推薦した者を人材委員会で確認するかたちだ。委員会のメンバーは全取締役と役付執行役員の合計十数名(電気機器メーカー人事部)
③ 将来性
中長期育成投資型人材プールの場合は、候補者としての将来性を判断したいという意向が強くなります。将来性をどう判断するかについては、コンピテンシー(ハイパフォーマーの能力、行動特性)基準などに照らして社内で判断するやり方と外部の適性検査などのアセスメントを使うやり方に大別できます。将来性の社内判断を優先順位1位として挙げた会社は全体の約4分の1でしたが、アセスメント結果を1位とした会社はありませんでした。アセスメントは選抜用ではなく配置に活用したいという会社のほうが多い状況です。
ローテーションを通じて長期間かつ複数の上司によってしっかり観察できている。また、人材委員会で各人のポテンシャルをディスカッションして判断している(運輸業人事部)
昨年から本格的にアセスメントを始めた。現在の選抜基準は業績と推薦重視になっていて、ややもすると推薦の声の大きさに引きずられがちになる。客観データをどこまで信用するか、まだ踏ん切りがついていない面もあるが、先に向けては将来性とアセスメントを中心にしたい。アセスメントの結果が出揃うことによって、明確に選抜できるようになることを期待している(金融業人事部)
電機メーカーの人事部・経営企画部を経て、総合コンサルティングファームで20年にわたり人事制度改革を中心としたコンサルティングに従事。その後、タレントマネジメントシステム開発ベンダーに転じ、取締役としてタレントマネジメントシステム事業を統括するとともに傘下のコンサルティング会社の代表を務める。2017年8月パーソル総合研究所に入社、タレントマネジメント事業本部を経て20年4月より現職。タレントマネジメントを中心とした調査研究を担当。人事専門誌などへの寄稿も多数。