「勝ち上がり型」の人材プールもある

一方、年齢にこだわらないという会社も半数あるわけですが、それらの会社は役員直前の人材層の中から選抜するので、とくに年齢を意識しなくても、人材プールに入る頃にはだいたい50歳前後になってしまっているという構造です。年齢をコントロールする会社の人材プールに比べると、15歳くらい年齢層が上になっています。このタイプの人材プールを「勝ち上がり型」と呼んでおきます。

経営人材候補は40代後半~50代で、上級管理職候補は40代半ばが中心。とくに登用年齢を早めようとはしておらず、年齢は結果論としてそうなっている。経営人材候補の選抜が難しく、40半ばまではトーナメントによる勝ち上がりにせざるを得ない(金融業人事部)
執行役員は50代前半からで、プール人材は40代半ばが中心。経営スピード向上のために若年化させたい思いはある(輸送用機器メーカー人事部)

年齢にこだわる会社とこだわらない会社では役員登用年齢の差もありますが、中長期的育成を視野に入れているかどうかが主な違いだと言えます。役員候補といっても、人材プールを早めに編成する会社は、たいていは「経営人材・次世代経営人材・次々世代経営人材」や「Ready now(すぐに登用可能)、Ready 3-5years(3~5年で登用可能)」というように複数階層の人材プールを作ります。次々世代経営人材プールを作るような会社であれば、30代や20代であっても人材プールに入ることがあるわけです。

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何を基準に役員候補者を選ぶのか

経営人材が役員候補だとした時に、次世代経営人材は部長候補、次々世代経営人材は課長候補だと思っていませんか? 必ずしもそうではないのです。部長は役員の候補で、課長は部長の候補だというのも間違いだとは言えませんが、それは従来の昇進トーナメント発想です。

藤井薫『人事ガチャの秘密 配属・異動・昇進のからくり』(中公新書ラクレ)
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ここは文字通り、「次世代経営人材」は今すぐではないが次の世代の役員の候補者、「次々世代経営人材」は次の次の世代の役員の候補者という意味で、現在の役職や次の役職とはあまり関係がないのです。たとえば、次世代経営人材をR3-5、次々世代経営人材をR6-10などと言い換えるほうが正確に伝わりそうです。つまり、次世代経営人材は3~5年後に役員登用できそうな人、次々世代経営人材は6~10年後に役員登用できそうな人という意味で、あくまで「役員登用できそうかどうか」という観点なのです。

では、役員登用できそうな人を選ぶ基準は何でしょうか。

調査の結果、プール人材を選ぶ時に最も優先するものとして、半数の会社が「これまでの実績」を挙げ、それ以外では「上司の推薦」と「将来性」を挙げた会社が約4分の1ずつでした。これは、次世代人材選びの難しさを表していると言えそうです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。