皇宮警察の不謹慎なリーク

そのような天皇陛下のご覚悟に対し、週刊誌などには今も匿名の人物による真偽不明な発言が氾濫している。

最近も、敬宮殿下に関わる話が、匿名の「皇宮警察関係者」の発言として載せられ、それがそのまま記事のタイトルにまでなっていた(『週刊女性』3月7日号)。しかし、それは「……ようです。……もっぱら噂なのです」という不確かな伝聞やうわさ話。しかも、敬宮殿下のご人格を傷つけるセクハラまがいの不快な内容だった。

そもそも、皇宮警察は皇室の方々の護衛などに当たるのがその職務のはずだ。にもかかわらず皇宮警察関係者の中に、皇室の方々の信頼を裏切る無責任な情報を、まことしやかにリークする者がいるような組織体質では、とても職務を全うできないのではあるまいか。

近年、皇宮警察について聞くに堪えない不祥事が立て続けに報じられている。そのような中、今年1月20日の「年頭視閲式」に天皇・皇后両陛下が初めてお出ましになった。これは皇宮警察の綱紀粛正を願われてのことだったのではないか。それでもこうした不謹慎なリークが続いている事実を、どう考えればよいのだろうか。

ノンフィクション作家の工藤美代子氏は、匿名の皇室情報について強く苦言を呈しておられる。

「皇室関係者」「宮内庁関係者」「皇室記者」「皇室ジャーナリスト」……すべて匿名の人物ばかりというのは、ノンフィクションを書いている身としては気になった。なぜなら、ノンフィクションは事実を書くことが大前提であり、その内容に著者が責任を持てない限り書いてはいけないのである。……

匿名のコメントに真実が含まれていることも多々あるので、簡単には無視できないのは事実だ。しかし、ただの憶測であったり、雑誌を売らんがための煽り記事だとしたら、あまりにも無責任ではないだろうか(『女性皇族の結婚とは何か』)

もし今後もこの種の無責任な匿名情報が後を絶たないようであれば、皇室の方々は反論も十分にできないお立場で、一方的に尊厳を傷つけられ、過大なストレスを抱え続けられることになる。未婚の方々のご結婚にも無視できない障害となるだろう。

それは大げさでなく、やがて皇室の存続自体を至難にしかねない。

高森 明勅(たかもり・あきのり)
神道学者、皇室研究者

1957年、岡山県生まれ。国学院大学文学部卒、同大学院博士課程単位取得。皇位継承儀礼の研究から出発し、日本史全体に関心を持ち現代の問題にも発言。『皇室典範に関する有識者会議』のヒアリングに応じる。拓殖大学客員教授などを歴任。現在、日本文化総合研究所代表。神道宗教学会理事。国学院大学講師。著書に『「女性天皇」の成立』『天皇「生前退位」の真実』『日本の10大天皇』『歴代天皇辞典』など。ホームページ「明快! 高森型録