「情報を、適切なタイミングでお知らせするのも大事」
「皇室の活動についての情報発信を考えるに当たっては、その前提として、皇室の在り方や活動の基本に立ち返って考える必要があると思います。皇室の在り方や活動の基本は、これまでもお伝えしているとおりの国民の幸せを常に願い、国民と苦楽を共にすることであると思います。そして、時代の移り変わりや社会の変化も踏まえながら、状況に応じた務めを果たしていくことが大切であると思います。
皇室を構成する一人一人が、このような役割と真摯に向き合い、国民の幸せを願いながら一つ一つの務めを果たし、国民との心の交流を重ねていく中で、国民と皇室との信頼関係が築かれていくものと考えております。国民との交流を重ね、国民と皇室の信頼関係を築く上では、皇室に関する情報を、適切なタイミングで国民の皆さんに分かりやすくお知らせしていくことも大事なことであると考えます」
あくまでも「皇室を構成する一人一人が……役割と真摯に向き合い……務めを果たし」ていくことが第一義であって、適切な情報発信“も”それに次いで大事、というスタンスでいらっしゃる。
日本の皇室にふさわしい情報発信
SNSについてはこれまでに、メリットとともに警戒すべきデメリットも指摘されている。そのデメリットの部分が、皇室と国民の間に思わぬ亀裂を生じさせないとも限らない。
天皇陛下があらかじめ用意しておられたご回答の中に、「SNS」という単語自体があえて取り上げられていなかった点も見逃せない。
関連質問へのお答えの中では、以下のように述べておられた。
「海外でもいろいろな王室の方々がSNSを使ったりして情報発信しておられることは、私も承知しております。恐らくその国々にあった形で、それぞれ発信をしておられることだと思いますけれども、この辺も宮内庁の方でいろいろと情報を集めているのではないかというように思っております」
「その国々にあった形で」という言い方から、他国のやり方をそのまままねするのではなく、わが国における皇室の在り方に照らして、自主的・主体的に情報発信の在り方を丁寧に探るよう、宮内庁に期待しておられることが拝察できる。
いずれにしても、天皇陛下は情報発信の前提として、技術論“以前”に、皇室自身が「基本」に立ち返って考える大切さを、強調しておられる。国民統合の心理的基盤において、重要な部分を担うべき皇室の存在意義を十分に自覚しておられ、そのような皇室の中軸である天皇として重責を担うご覚悟がうかがえる。