分娩が減れば産院の収益も減ってしまう

これまでも出産育児一時金が増額されると、産院が分娩料を値上げし、そのたびに便乗値上げだと騒がれてきました。

しかし、産婦人科医の立場からお伝えしたいのは、産む人が減れば、産院に入るお金も減るので、産院が今までの設備を維持するには、値上げも仕方ないという事情です。今は物価高や人手不足に対応できないほど窮している産院も少なくありません。

分娩が減っていることで実際、地方では分娩をやめる産院もあり、集約化されています。とはいえ分娩による収益は、どこも減っています。

一方、都市部に関していえば、分娩はそこまで減っていませんが、もともと金額が高い。産院が分娩を扱おうとすると、設備投資が高額になりますし、人員も必要になるからです。

ただ出産は自費診療なので、自由に価格を設定できる分、他の診療科の赤字部分を分娩で穴埋めしようとしている病院もありますから、一時金増額のたびに病院が便乗値上げをしているのではないかと騒がれてしまうのだろうと思います。

しかし、2024年から出産費用が公表されて、産院の費用が見える化されますから、利用者は比較して選べるようになります。

よく「都立病院はあれだけ安くできるわけだから、もっと安くしてほしい」という声も聞きますが、そもそも税金の入っている公立の病院と私立病院では収益構造が全く違います。見える化されれば、そういった比較検討もしやすくなるだろうと思います。

一緒に楽しんで育児をする夫婦
写真=iStock.com/Nayomiee
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