「新しい資本主義」では可視化しにくい資本を企業評価に加える

IIRC(国際統合報告評議会)によれば企業は6つの資本からなっています。

・財務資本
・製造資本
・知的資本
・人的資本
・社会関係資本
・自然資本

このうち財務資本と製造資本が可視化できるため、今までこれをもって企業評価がなされてきました。

ここに、人的資本を始め、可視化しにくいその他の資本も加えて総合的に評価しよう、それこそが企業が持っている資本である、という視点を加えたのが、このたびの「新しい資本主義」の考え方です。

例えば、社員に外部機関に頼んでトレーニングを受けさせると、現状では財務諸表上ではコストとして消えてしまいます。

しかし、そのトレーニングは人の資本を押し上げていることになるので、資本が人的資本に移っただけだという考え方をしようと、このガイドラインは言っているわけです。

植物の双葉
写真=iStock.com/ArtRachen01
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社員のやる気や経験、意欲も人的資本になる

非財務情報可視化研究会の検討状況(令和4年3月内閣官房)」の資料ではIIRCが考える人的資本について、このようにも書かれています。

「人々の能力、経験およびイノベーションへの意欲。例えば組織ガバナンス戦略を理解し、開発し実践する能力。プロセス、商品およびサービスを改善するために必要なロイヤリティーおよび意欲。先導して管理し、協調するための能力を含む」

つまり、会社へのロイヤリティーややる気、経験、意欲なども「能力」なのだと言っているのです。私が入社したころの野村證券がまさにこれでした。ロイヤリティーが極めて高かったのですが、それには全寮制になっていたことも影響していたと思います。嫌でも一体感が高まり、会社の考え方が浸透していきました。

あれこそが人的資本だったのではないかと思うのです。株価が最高値をつけたのも、私が野村證券に入社するちょっと前の1987年でした。