積み立てで高値買いを避け、非課税制度で利益減らさず

資産を目減りさせないためには、「買い方」にも工夫が必要だ。

ポイントの1つは、「積み立て」で投資すること。投資できるお金が仮に300万円あっても、1度に投資せず、時期をずらして数回で買うなど、タイミングを分ける。そうすることで、値段が高いときにたくさん買ってしまうリスクを避けられる。

もう1つのポイントは、お得な制度を使うこと。年間40万円を上限に投資信託などを積み立て購入する「つみたてNISA」は、得られた利益が非課税になる特典がある。積み立てられる商品は、長期投資に向く、運用のコストが抑えられている、などの条件をクリアしている投資信託とETFで、商品選びがラク、というのもメリットになっている。

一定額を拠出して投資信託などを積み立て、原則60歳以降に年金や一時金で受け取る「iDeCo(個人型確定拠出年金)」では、拠出したお金が所得から差し引かれて所得税や住民税が安くなるほか、運用で得られた利益が非課税になる。年収600万円・年間24万円積み立てで節税効果4万8000円などの例があり(社会保険料などによって異なる)、所得が多いほど節税効果が大きい。自営業者やフリーランスは年間81万6000円、企業年金がない会社員は同27万6000円など、職業などで掛け金の上限が異なる。

つみたてNISA、iDeCoとも、リスクを抑える積み立てという方法で投資ができ、なおかつ税負担が抑えられる、というわけだ。

「所得控除があるiDeCoの方がメリットは大きいですが、60歳まで引き出せないという点には要注意。資格取得、転職、独立など、キャリア形成のための費用捻出に支障がないかなどを考えたうえで検討したい。金額は変更できるので、ライフサイクルに応じて調整していくのもいい方法です」と、深野さん。

これから始めるなら、商品も豊富で手数料も抑えられたインターネット証券を選択肢に考えたい。

税メリットがある2つの制度

つみたてNISA
【概要】
年間40万円を上限に、2042年まで、非課税で積み立て投資ができる制度。低コストなど、国が認定した投資信託などが対象なので、商品選びもラク。目的は自由。購入時手数料は無料。保有期間中は運用のコストとして信託報酬がかかり、料率は投信によって異なるが、一定の基準以下に抑えられている。
【運用資産】
国が認定した投資信託、ETF
【メリットなど】
○利益が非課税で有利に運用できる
○いつでも引き出せる
iDeCo
【概要】
最長65歳、または60歳まで、年間14万4000円から81万6000円まで(職業などにより異なる)を非課税で積み立てられる制度。掛け金が所得から控除され、所得税・住民税が軽減されるメリットも大きい。加入時(初期手数料2829円)、積み立てをしているとき(毎月170円程度~)、給付を受けるときなどに手数料がかかり、積み立てているときの手数料は金融機関によって異なる。
【運用資産】
投資信託、預金商品、保険商品など
【メリットなど】
○利益が非課税で有利に運用できる
○掛け金が所得控除されるので節税メリットが大きい
△60歳まで引き出せない(ほかのことに使わず、老後資金がつくれる)
ファイナンシャルプランナー 目黒政明さん
目黒政明(めぐろ・まさあき)
ファイナンシャルプランナー
生活設計塾クルー代表取締役。大手証券会社、日本初の独立系FP会社を経て、2010年より現職。個人を対象に運用アドバイスを幅広く行う。
 

ファイナンシャルプランナー 深野康彦さん
深野康彦(ふかの・やすひこ)
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルリサーチ代表。クレジット会社、独立系FP会社を経て、1996年1月に独立。投資の啓蒙や家計管理の重要性を説く。
 

イラスト=平尾直子

高橋 晴美(たかはし・はるみ)
フリーライター

ファイナンシャルプランナー(AFP)。編集プロダクションを経て独立。主な執筆テーマは、資産形成、投資信託、保険、経済学など。