原材料に近い業種ほどインフレに強い

どんな業種がインフレに強いのか、もう少し具体的に見てみましょう。一般的に原材料に近い商品を作っている業種ほど、インフレ時に価格転嫁しやすいことが知られています。激しい物価上昇に見舞われた1970年代もそうでした。

消費者も企業も「物価が上がって大変だ」と言っている中で真っ先に値上げをして業績を維持したのは鉄鋼と海運でした。今回のインフレでも同じです。日本郵船や商船三井、川崎汽船などの海運大手は2022年3月期の決算で軒並み最高益を更新し、株価も急上昇しています。たとえば日本郵船の株価は21年1月に2400円程度でしたが、22年3月には1万2400円まで約5倍に上昇しています。いち早くインフレの兆候に気づき、海運関連企業に投資した人は、資産を大きく増やすことができたわけです。

鉄鋼業界も同様です。最大手の日本製鉄は22年3月期の決算で最高益を更新しています。経団連は大手企業の22年の夏のボーナスについて、集計結果を8月5日に公表しました。上昇率は平均で前年夏比8.77%と、1981年以降では最大です。上昇率が最も高かったのは鉄鋼業界で86.6%でした。値上げしやすい業界はボーナスを増やしやすいことが証明された形です。

インフレが長引くとディフェンシブ銘柄が有利

企業の業績がいいと株価も上がります。株式投資の世界では、業績が景気動向に大きく左右される業種を「景気敏感業種」、反対に業績が景気の影響を受けにくい業種を「ディフェンシブ業種」と呼んでいます。

景気の影響の受け方は業種によって変わる

図は東京証券取引所が分類した33業種の株価指数の変化を示したものです。あくまでも過去の動向ですが、業種によって大きく差があることがわかります。

この先はどうなるでしょうか。インフレが長引いた場合、最も不利になるのは高級品や嗜好しこう品です。物価が上がって生活が苦しくなったときに真っ先に出費を削るのは価格の高い嗜好品などだからです。たとえば百貨店のような業態は大きなダメージを受ける可能性があります。

一方で食品や日用品など生活必需品の需要が大きく減ることはありません。電気やガスなどのインフラ関連も同じです。こうした商品やサービスを提供するディフェンシブ業種の株価は下がりにくく、働く従業員にとっては給与やボーナスが下がるリスクが低い業種といえます。

株価でわかる景気変動に強い業種、弱い業種