ディフェンシブ銘柄はインフレ後も期待できる

これから投資するなら、どんな銘柄を選ぶべきでしょうか。基本はディフェンシブ銘柄を選択することです。グラフは過去のインフレ時にNYダウと代表的なディフェンシブ銘柄の株価がどう推移したかを比較したものです。1970年を起点に上昇率を示しました。

株価低迷時代に資産防衛に役立ったのはこの銘柄

NYダウは80年までほとんど横ばいで上昇していません。これに対しP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、日用品を主力とする典型的なディフェンシブ銘柄で、NYダウを上回る上昇率を示しています。日本企業でいえば花王などがこれに当たります。アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドは、大手の農産物加工企業。作物の物流ネットワークを世界中に有する穀物メジャー(大手専門商社)です。物価が上昇しても小麦などの需要が大幅に減ることはありません。70年代のインフレ時にも株価が大きく上昇しています。

通信会社も需要が減りません。物価が上がったからといってスマホを解約する人はいないからです。ベライゾン・コミュニケーションズは米国の大手通信会社で、日本ではauを運営するKDDIやNTTドコモなどに相当します。また、コロナ禍で半導体不足が深刻になり、自国で確保する動きになっていますのでインテルも有望でしょう。あるいは、生活必需品を扱うイオンやニトリなど大手小売店も業績を維持できるはずです。物価が上昇しても消費を抑えることが難しいものは何かを考えると、有望な投資先が見つかります。

この先、インフレが収まることも考えられますが、景気が回復してくれば、ディフェンシブ銘柄の株価も上昇します。ディフェンシブ銘柄はインフレ時には業績が下がりにくく、景気が好転すれば業績が良くなりますから、手堅い投資先といえるのです。資産を5倍、10倍に増やすことはできませんが、景気が良くなれば2倍になることはあります。これから投資をするのであれば、ディフェンシブ銘柄を長期で保有するのが有利な選択肢といえるでしょう。

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構成=向山勇

加谷 珪一(かや・けいいち)
経済評論家

1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。