子どもは空気を読んでいる

説明した上で親として十分に気をつけてあげてほしいのは、お子さんは空気を読むということです。

精神疾患の親と生活しているお子さんは、小学生でも中学生でも、一体どこで教わったのか、不思議と事情を隠すものです。宿題をしていかなかったり、忘れ物が増えたりして先生に事情を聞かれたとき、患者さんのケアに手一杯で家族が子どもの世話にまで手が回っていないとか、そういう状況だから上の子が下の子の面倒を見ているとかの事情があっても、本当の理由を子どもは話しません。大人が作った偏見や差別に、子どもが巻き込まれてしまっているケースが少なくないのです。

だから親のほうから、

「誰かに助けてもらっていいんだよ」
「何か聞かれたら、事情を話して大丈夫だよ」

と、伝えてあげてほしいと思います。先生や、おじいちゃんや、おばあちゃんや、別の大人に頼っていいよ、SOSを出していいよ、と教えてあげてください。

患者さんのケアには、思いのほか時間を取られます。サポート側が仕事や家事を一手に担うことになれば、お子さんに構ってあげられる時間はさらに限られてしまいます。全部を完璧にしようとするのは無理なことです。手が届かない部分が出てくることは、もう仕方がありません。

ただ、事情をわかってくれる人がいれば、手が届かない部分を別の大人に助けてもらうことはできます。誰かに頼ることを、親である自分自身にも許してあげてください。お子さんのためにも、サポートしてくれる大人の手はできるだけ多いほうがいいのです。

小さい子には時間を短く区切って触れ合う

お子さんがまだまだ幼い場合には、親の体調が悪くてぐったり横になっていても、我関せずで近寄っていってしまいますよね。

もし、患者さんにお子さんの相手をする余裕があるなら、無理のない程度に触れ合う機会を作るのは、親子にとってもとても素晴らしいことです。ただ、患者さんの限界がどこでくるかわかりませんから、

「お母さんは体調が悪いから、15分だけだよ」

と、横からでもいいので時間を短く区切ってあげてください。患者さんから子どもに伝えるのはつらいでしょう。一緒に過ごしたいお子さんの気持ちを少しだけ満たしてあげつつ、短時間だけという条件をつけることによって、患者さんも安心できます。

「15分なら相手をしてみよう」

と、お子さんに対して向き合いやすくなります。患者さんだって、お子さんがかわいい気持ちに変わりありません。ただ、心身の疲れから相手をしてあげる余裕がないのです。15分経ったら、お子さんを連れて離れてあげてください。