「下位30%を解雇せよ」日本法人人事担当者の苦悩
アメリカ企業の大量解雇は今に始まった話ではない。業績が低迷するとアメリカ国内の解雇だけではなく、日本法人もその余波を受けた。GE(ゼネラル・エレクトリック)社やファイザーでも日本法人の社員が大量に解雇されたこともある。2000年代半ばに日本GEでリストラ業務を担当した当時の人事担当者はこう語っていた。
「アメリカ本社から成績下位の30%の社員を解雇するように通達してきた。『日本の法律では簡単に解雇できない』と何度も言ってもほとんど理解されなかった。解雇するには割増退職金が必要なこと、社員を説得するのに相応の時間がかかることを詳しく説明した。最終的に下位20%の社員を解雇することで納得してもらったが、リストラの指令がある度に胃の痛む思いをした」
解雇に必要な4つの条件
確かに無理もない話だ。日本の労働契約法16条には判例法理で確立した「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」との規定がある。
「合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない」という表現はわかりにくいが、裁判例では解雇するには①「経営上人員削減の必要性があるか」、②「解雇を回避するための配置転換などの努力をしているか」、③「解雇対象の人選は相当性があるか」、④「解雇対象者や労働組合などと解雇の必要性について十分に協議しているか」という4つの要件を満たす必要がある(整理解雇の4要件)。とくに解雇回避の努力や、辞めさせたい人の人選の相当性など合理的根拠を証明するのはハードルが高いだろう。
そのため大手企業の多くは割増退職金付きの「希望退職者募集」による本人同意を前提にした解雇を行っているのが日本の実態だ。