男性と女性の性欲は違うのか
あとこれも性教育の文章でよく見るんですが、男女ともに性欲はある、とした上で「男の子の性欲は直接的」で「女の子は段階的」というものです。
男子は「すぐキスやセックスをしたくなる」性欲を持っていて、女子の性欲は「手をつないだりデートしたり一緒にいたいと思うもの」ってやつです。
確かに男女が好むエロって傾向があると思います。男性向けのエロ漫画はとにかく汗とか汁とか何かしらの液体まみれになっている。体の部位が巨大化していたり、とにかく射精シーンの爆発っぷりの非日常感が大事。でも女性向けの漫画は前戯を始め挿入したところで最終ページになって射精シーンはなしでENDとかあります。このあたりは私が読んだ作品に偏りがあった可能性も否めませんが、やっぱり両者の好みは全く同じ、ではないのはたしかにそうだと思います。
でも、自分の経験からして、男性ならばいつでもどこでも誰とでもセックスできればヒャッホーというわけじゃないと思うんですよね。
本当は人によって違うのではないか
セックス未経験の男性と付き合い始めた時、セックスをしようとしないので「どうしてなのか?」と聞くと「わざわざする理由が分からない」と言われてビックリしました。
「性欲はあるし1人でしているけど、別にセックスはしなくてもいい。好きな子と2人でゴロゴロしているだけで楽しい」と男性が言うのです。それは未経験の頃の私と全く同じ感覚でした。この感覚がある男性もいるんだ、ということを大人になってから知ったのでした。
エッチなものを見たり思い浮かべたり、敏感な部分に自分で触れたりした時に自分の中から湧き上がる性的欲求は、女性にもある。それを「性欲」と呼ぶとしたら、相手と性行為をしたいという欲求は「性行為欲」みたいな感じで、またちょっと別のものなんじゃないでしょうか。必ずしも連携しているわけじゃないのは、男性も女性も同じなのでは。
そして「性行為欲」は、経験したことがある、どんなものか知っているということも大きくかかわっていると思います。心地よさや興奮を知っているからやりたくなることもあるだろうし、「周りがもう童貞捨ててるから俺もやんないとヤベエ」みたいな焦りだったり、「セックスすると相手が喜んでくれるから」とか、性欲にも性行為欲にも、中身はいろいろ種類があるんじゃないかと思うんですよね。
自分の性的欲求を認識する前に教わってしまう
私たちは、「自分はどんな性的欲求を持っているのか」と考えたり感知したり認識する前に、男はこうだ、女はこうだ、と教わってきてしまいました。
自分の性的欲求がどんなものか分からないまま「性的同意はちゃんとしなさい」と言われても、何を基準にしていいのか、実は難しすぎる気がします。
1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞(青林工藝舎)。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を2012年に刊行、ベストセラーとなる。ほかの主な著書に『キレる私をやめたい』(竹書房)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)などがある。