納付を延長しなくても年金財源を確保する手はある

今回の64歳までの納付義務の延長の政府の目的は「少子高齢化に伴う年金の給付水準を抑制し、年金財源の確保」にあるとする。しかし延長することなく年金財源を確保する手立てはある。国民保険料納付義務を免除されている専業主婦など配偶者に扶養されている第3号被保険者から保険料を徴収することだ。現在、第3号被保険者は763万人もいる(2021年)。

折しもこの10月から従業員101人以上500人以下の企業で働くパート・アルバイトの社会保険(厚生年金・健康保険)への加入が義務化された。すでに501人以上の企業は2016年10月から義務化されている。新たに適用されるのは①週所定労働時間20時間以上、②月収8.8万円以上(年収106万円以上)、③雇用期間2カ月以上見込み――の人たちだ。

101人以上の企業で働く主婦パートにとって、従来は年収130万円を超えると社会保険への加入義務が生じる130万円のカベがあったが、今度は106万円とハードルが高くなる。社会保険加入者が増えることは年金財源の確保にも貢献し、よいことだ。しかし、またしても国民年金保険料の納付義務のない第3号被保険者にとどまるために、就労調整する人がいる。

社会保険に加入しないように調整する人が加入派を上回る

リクルートジョブズリサーチセンターの調査では、年収130万円未満で働くパート女性に今回の社会保険加入拡大への対応について聞いている(「2022年10月社会保険適用拡大に関する調査」9月28日)。それによると「社会保険(厚生年金・健康保険)に加入しないよう、所定労働時間を短縮する」と回答した人が28.6%、「加入しないよう現在の勤務先を辞めて転職する」が1.3%。計29.9%が加入しないと答え、「加入する」と答えた22.6%を上回っている。

加入しない理由で最も多かった理由は「健康保険の扶養から外れるから」で26.1%、次いで「手取り収入が減少するから」(25.8%)、「配偶者が配偶者控除(税制上の優遇)を受けられなくなるから」(17.2%)となっている。

スーパーマーケットのレジカウンターで清算中のカップル
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