合意形成のために視点を増やす

ファシリテーターは、発言者が偏らないように「他の人の意見も聞いてみたいのですがいいですか」「他に意見はありませんか」「他に気になる点はありませんか」と積極的に他のメンバーにも発言を促しましょう。これには、3つのメリットがあります。

第一に、他の人が発言することで、場の空気を変えることができます。それと同時に意見対立している方に、少し冷静になる「間」を提供することができます。

2つ目は、さまざまな視点から問題を解決する準備ができます。また、情報が欠如していると、物事の認識の違いが生まれて合意が得られにくくなる場合もあります。議題に関する情報はできる限りオープンにし、メンバー全員で共有できるようにすることが大切です。

3つ目は、決定事項への納得感が高まります。この時点で、意見を積極的に引き出すことで、後から「実は不本意だった」「誰かがやってくれると思った」と、責任転換をしたり、人任せにしたりする事態を防止できます。全員が当事者意識を持って仕事に取り組めるようになるでしょう。

話し方でも印象管理をお忘れなく

口調が相手の感情に与える影響も忘れてはいけません。相手に理性的な対応を求めるのと同時に、自分自身の話し方の印象管理も大切です。非難するような強い語調にならないように、落ち着いた低めのトーン、そして早口でまくしたてないように、理解しやすいスピードといったように話し方をコントロールします。

もちろん言葉だけでなく、表情やしぐさなどの非言語のコミュニケーションも周囲は見ています。このようにファシリテーターは話し方や非言語部分でも安心・信頼感を与えましょう。

会議で対立が起きることは健全なことです。むしろ、組織やチームを活性化していくためには、この対立を通してどのように互いを理解し合えるかが大切です。

ファシリテーターとしてリーダーシップを発揮して自由な意見が飛び交う会議の環境づくりに大いに貢献していきましょう。

阿隅 和美(あすみ・かずみ)
WACHIKAコミュニケーションズ代表

青山学院大学経営学部卒業。中部日本放送アナウンサーを経て、NHK衛星放送キャスターとして、株式市況、世界のトップニュースを10年担当。20年にわたり、スポーツ、経済、情報番組に関わる。アナウンサー名は瓶子和美。現在は、TV現場で培った技術を活かし、ビジネス現場でコミュニケーション力を発揮し、成果を出す人材を育成する研修、講座、講演を行っている他、経営層・管理職、エグゼクティブリーダー向けプレゼン・スピーチのパーソナルトレーニングやコンサルティングなどを実施している。著書に『心をつかみ思わず聴きたくなる話のつくり方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『仕事ができる人の話し方』(青春出版社)があり台湾でも翻訳されている。ホームページ